ファラージ氏、潜入取材で撮影された会話では「話を聞いていなかった」と 外国献金めぐり圧力高まる

水色のジャケットに赤いネクタイをしめたファラージ氏
Published
この記事は約 10 分で読めます

ローラ・クンスバーグ司会者(サンデー・ウィズ・ローラ・クンスバーグ)

英野党リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首は6日放送のBBC番組で、自分が同席した食事の場で、身分を偽り潜入取材をしていた覆面記者と、自分の側近が、同党が外国から献金を得るための方法を話し合う様子をひそかに撮影された問題について、自分は覆面記者と側近のやりとりを「率直に言って、聞いていなかった」のだと話した。

ファラージ氏の側近ダン・ジュークス氏と、リフォームUKの政策担当ジェイムズ・オア氏は、アメリカ人実業家のイギリス在住の息子を装ったジャーナリストと会話する様子を、ひそかに撮影された。動画では、アメリカ人献金者から資金を得る方法についての会話や、実体のない企業に世論調査の費用を支払うよう依頼したのだという発言などが収められていた。取材映像の公表後、2人は共に党内の職を解かれた

ジュークス氏は不正行為を否定している。オア氏は英スカイ・ニュースに対し、党の内部調査に全面的に協力すると述べている。

ファラージ氏は、ジュークス氏と記者の会話に同席していたが、その内容をしっかり聞いていたわけではないのだと、BBCのインタビューで述べた。また、一連の献金疑惑をめぐり高まる圧力の中で、家族から辞職するよう「懇願されている」のだと明かした。

英調査報道グループ「ヴァーベイティム・インヴェスティゲーションズ」が撮影し、英公共放送チャンネル4ニュースが放映した映像の中で、ファラージ氏とジュークス氏は、アメリカ人実業家がイギリス在住の息子を通じてリフォームUKに50万ポンドを献金するという内容の会話に同席していた。

イギリスの選挙法では、イギリスの政党への献金が認められるのは、イギリスで有権者登録をしている人物か、イギリスで法人登記している企業に限られる。このため、リフォームUKに接近したジャーナリストが装った「イギリス在住の息子」は献金が可能だが、「その父親のアメリカ人実業家」は献金が認められないという状況だった。

提案された献金は、潜入取材する側の提案だったため実際には行われなかったが、リフォームUK側がその金銭受け取りを検討した様子が明らかになり、今では問題視されている。

4日に開催されたリフォームUKの党大会で、記者からこのやり取りについて質問されたファラージ氏は、話題になった金銭授受の仕組みが正当だったのかどうか、疑問に思っていると述べた。

ファラージ氏は6日朝のBBC番組「サンデー・ウィズ・ローラ・クンスバーグ」で放送されたインタビューで、「私はコンプライアンス担当官ではない。クラクトン補欠選挙の真っ最中だった。あの場所に私は行った。正直言って、話を聞いていなかった」と話した。

チャンネル4が放送した秘密撮影の映像では、ファラージ氏は「アメリカ人実業家とその息子」を装った2人と食事を共にしている。それについてファラージ氏はBBCに、「ロンドンに拠点を置くグローバルな家族企業があると聞いていた。なので、資金はシンガポールから来るかもしれなかった」と話した。

屋外の東屋でテーブルについているスーツ姿の若い男性と、満面の笑みを浮かべながら座ろうとしているスーツ姿の中年男性を秘密撮影した映像

画像提供, Channel 4/Verbatim

画像説明, 党の献金者を装った潜入記者が英南東部クラクトンで、ナイジェル・ファラージ氏と首席補佐官(当時)のダン・ジュークス氏(左)と食事を共にした

「資金は世界中から来る可能性がある。ロンドンにあるファミリー企業のオフィスに、世界中から収入が入る可能性もある。私は選挙法に精通しているし、誰よりも献金法に詳しい」とも、ファラージ氏はBBCに話した。

「率直に言って、この件に関わっている2人はこれまで資金調達に関わったことがなく、資金調達に直接関わるべきではなかった。2人は相手について基本的な身元調査を行うべきだったし、身元調査が済んでいない人間は誰だろうと決して、私のところへ連れてくるべきではない」

チャンネル4の映像をめぐる騒動は、リフォームUKの党大会を混乱させる恐れがあった。また、与党・労働党と野党・自由民主党は、ロンドン警視庁にこの疑惑の捜査を求めている。ロンドン警視庁は捜査するかどうか、検討中だ。

ファラージ氏の側近の中でも高い地位にいたジュークス氏とオア氏は、党の内部調査の結果が出るまで党の職を退いている。しかし、政敵たちはファラージ氏自身も調査の対象となり、責任を取るべきだと主張している。

ファラージ氏は、リフォームUKがイギリスの寄付者を経由して外国の団体から資金を受け取ったことは一度もないと、断固として主張した。

しかし、同党を揺るがす新たな危機の中で圧力が高まる中、ファラージ氏はBBCに対し、政治活動を続ける上で「初めて」家族の支持を得られなくなったと述べた。

「家族は、私が荷物をまとめて立ち去ることを望んでいる」と ファラージ氏は述べ、自分は辞任を考えていなかったが、「家族から懇願されると、それに背くのは簡単なことじゃない」と付け加えた。

同氏はまた、5日朝にドーヴァー港で行われた、英仏海峡を渡る移民に反対する「ボートを止めろ」デモの参加者を非難した。この抗議活動では、覆面をした数百人の参加者らが港に押し寄せ、交通に大きな混乱を与えた。

ファラージ氏は、公共のデモでマスクや目出し帽を着用している人を「非難する」と述べた。

「マスクや目出し帽をかぶって街頭に出て抗議活動をすることは許されるべきではない。あらゆる面で間違っている。だからドーヴァーで起きたことを嘆かわしく思う」

このインタビューの放映後、英政府のジョナサン・レノルズ・ビジネス担当相は、「外国人をあまり好まない政党にしては、外国からの資金には甘いようだ」とコメントした。

「この国では、民主主義の仕組みについてルールがあり、誰もがそれに従わなくてはならない」とレノルズ氏は言い、「自分が権力の座を真剣に目指しているのか、それとも抗議活動を続けさせたいのか、迷っている人がいるようだ」とも皮肉った。

【分析】ファラージ氏はもっと注意する必要があるかもしれない

赤いジャケットを着た女性が、水色の看板などが並ぶ広い会場に立っている
画像説明, リフォームUKの党大会を取材したローラ・クンスバーグ司会者

チャンネル4が放送した献金疑惑が、リフォームUKにとって恥ずべきものなのは確かだ。そして、次期総選挙で勝利した場合の政権運営計画について話し合う予定だった党大会は、そのせいで紛れもなく混乱してしまった。

バーミンガムにある展示場は、すきま風がよく通る巨大な施設だ。そして、その至る所に「リフォーム ― 最初の100日間」と書かれた巨大なポスターやプラカードが掲げられていた。

リフォームUKは、フランスの次回大統領選で有力候補とされている「国民連合」のジョルダン・バルデラ氏と、英仏海峡を越えてくる小型ボート問題に対処するための合意を取りまとめたのだと、この党大会で大々的に宣伝したかったのだ。

加えてリフォームUKはこの党大会で、2029年に予定される次のイギリス総選挙で自分たちが勝てば、所得税を減税するという公約を強調したかった。 教育や福祉、都市計画などに関する自分たちの提案についても、話し合いたいと思っていた。

党大会に参加した党員たちは、集まれたこと自体を喜び、様々なセッションに参加し、会場で拍手喝采を送り、ステージ上のファラージ氏に熱狂した。

しかしそれ以外のイギリスの人々がこの党大会に注目したとするなら、それは政治とカネの有害な組み合わせがリフォームUKにとってすさまじく面倒なことになっていたからだ。

ファラージ氏にとって今年の夏はややこしいものだったし、最近では支持率も低迷している。そうした中で、今回の騒ぎが有権者の間でファラージ氏への支持にどう影響するのか、にわかには把握しづらい。

党幹部たちは今回の出来事について、紛れもないミスだったと口数少なく認めている。

幹部の1人は、不透明な政治資金に関するほかの疑惑なら、何の問題もなかったと確信をもって一蹴できるのだと私に話した。それに対して今回の疑惑は確かに深刻だと、その党幹部は認めたし、一定層の重要な有権者に「疑問を抱かせる」ことになるだろうとも認めた。

ファラージ氏は今回の疑惑は「ささいな、狭い地域での面倒ごと」に過ぎないと笑い飛ばそうとした。しかし、本当にそうなのだという振りをする人はいない。

また、リフォームUKの熱狂的な支持者は別にして、それ以外の有権者はこうした話題を不快に感じるかもしれないと、そういう認識も党内には、内々にはある。

別の党関係者は、今回の暴露報道は「全く予想外だった」と私に話した。「適切な身元調査がまったく行われていなかった」ことに衝撃を受け、自分は何も悪いことはしていないと主張するジュークス氏とオア氏の態度に、あぜんとしたのだという。

さらに別の党幹部は、「願わくば、これは単なる成長痛であってほしい」と話した。つまり、リフォームUKは急成長してきた政党なので、時にはミスも起きるのだと、この人は言いたいのだ。それでもこの幹部は、「党はもっと、しっかりしなくてはならない。党をここまで率いた人たちが、次の段階においても適任だとは限らない」とも述べた。

党大会に出席したファラージ氏の支持者の間では、さまざまな意見が出た。ある支持者は、党が不当な扱いを受けていると確信しており、「すべてが(ファラージ氏に)不利に働いている」と述べた。

一方、別の若い支持者はこれを否定し、「何もかも記録に残っていて、カメラにも映っている。ナイジェルは党員の発言にもっと注意する必要がある」と私に話した。

しかし、「またか」という気持ちが拭えない。政治資金スキャンダルをどう思うかと、別の党員に尋ねたところ、「どのスキャンダルのことですか?」という疲れたような返事が返ってきた。

昨年の同じ時期、同じ会場で行われた党大会で、リフォームUKはまるで目の前にあるなにもかも、ばっさばっさとなぎ倒しているかのようだった。それから12カ月後、党は前よりも懸命に働かななくてはならないし、監視の目はより厳しくなっている。プレッシャーは増大する一方だ。

「アメリカ人実業家とその息子」を装った覆面記者と自分の側近との会話を、自分は「率直に言って聞いていなかった」のだと、ファラージ氏は主張した。この言い分は、多くのことを物語っている。今後、このような深刻な失態を繰り返さずに権力の座に就くためには、同氏はもっと周囲の状況に注意を払う必要があるかもしれない。