【解説】なぜ日本企業はAIの活用に消極的なのか

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マイケル・フィッツパトリック
深刻な労働力不足、高齢化、慢性的な生産性問題に直面する日本企業は、人工知能(AI)の導入するのに適した環境であるはずだ。しかし、イギリスやアメリカと比較すると、依然として多くの職場でAIの導入は遅く、慎重な姿勢が見られる。
日本のAIへの対応は、まるで日本の伝統的な能のように、動きがゆっくりとしている。
能では、舞台上の仮面をつけた登場人物たちが皆、急ぎ行動する必要があると同意し、厳粛な同意とともにその呼びかけが繰り返される。しかし、役者たちはその場に凍りついたまま動かない。
これは舞台をドラマチックに盛り上げるには素晴らしい演出だが、国の差し迫った困難に対処するには全く不向きだ。
職場でのAIの活用状況を示すデータでは、日本が他国に遅れをとっていることが示唆されている。経済協力開発機構(OECD)が昨年11月に発表した報告書によると、業務の一環としてAIを活用している日本人労働者はわずか8.4%にとどまる。
対照的に、別の統計では、アメリカでは50%、イギリスでは32%となっている。アラブ首長国連邦(UAE)に次いで2番目にAIの普及率が高く、アジアでは最も高いとされるシンガポールでは、労働者の56%が「週に複数回」AIを使用しているという。
では、なぜ日本はなかなか踏み切れないのだろうか?アメリカのスタートアップ企業Kuse(キューズ)の共同創業者であるオースティン・シュー氏は、その理由は日本企業が保守的でリスクを回避する傾向にあるからだと言う。キューズは最近、日本にオフィスを開設し、日本企業にAIシステムを販売している。
「組織によっては、プロセスや合意形成を重視する文化が、かえって物事を遅らせている」とシュー氏は言う。「特に顧客対応業務では、AIのミスに対する許容度はほぼゼロに近い。機械に任せるくらいなら、その役割を空席のままにしておく方がましだと考える組織もある」。
シュー氏によると、アメリカでは状況が大きく異なり、一部の企業ではすでに生産性向上のため、AIエージェントに大きな自由度を与えているという。「アメリカでは、AIは同僚で、ヘルパーとして導入され、徐々にワークフローの一部となる。アメリカの経営者の姿勢は多くの場合、『まずは試してみて、それから修正する』というものだ」。
同氏は、日本企業がAIを信頼して活用するには、今以上の証拠を必要としているのだと付け加えた。
京都先端科学大学のパリッサ・ハギリアン教授(国際経営学)も、多くの日本企業はリスクを回避しようとする傾向があまりに強く、AIに目を向けようとしないという意見だ。
「AI導入の課題は、日本企業におけるあらゆる変革の導入と同じだ。そのため、特に職場におけるAIの利用は依然として限定的で、慎重な姿勢が取られている」
より起業家精神に富んだアメリカの企業文化と比較した場合、日本企業はミスや不確実性、評判リスクに対して非常に敏感だと、ハギリアン教授は指摘する。
「生成型AIはまだ完全に信頼できるものではないため、(日本では)主に文章作成、要約、情報収集といったリスクの低い作業に用いられている。中核業務や意思決定、全体的なプロセスの改善にはほとんど使われていない」

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とりわけ日本の医療業界はAI導入に消極的で、一部の病院ではカルテの完全なデジタル化すらまだ完了していないと言われている。「紙の書類がとてつもない量で溜まっていく」と、日本の病院職員の一人は言う。匿名を希望するこの人は、「まるで石器時代みたいだ」とも話した。
日本政府は、低いAI普及率が全般的な問題になっていることを認識しており、より多くの企業にAI技術を採用してもらうよう努めている。昨年には、AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が可決された。
同法は、緩やかな規制を通じて企業のAI投資拡大を促進するもので、政府は日本を「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」にすると約束している。
政府はまた、AIの活用拡大が日本の生産性向上に役立つと考えている。日本の生産性は、依然として先進7カ国(G7)の中で最低水準にある。
日本の財務省によると、企業のAI導入率はすでに大幅に上昇しており、5年前の11%から、現在では75%まで伸びた。

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しかし批評家たちは、AIを導入している日本企業でも、実際にAIを使っている従業員はごくわずかで、使っていてもその範囲は非常に限定的だと指摘する。
明治大学で日本の社会システムとテクノロジーを専門とする小笠原泰教授は、日本ではテクノロジーに精通した人材が不足していると述べている。
「日本人はスマートフォンなどのガジェットで遊ぶのが好きだが、日本ではデジタルリテラシー(技術を活用する能力)が低い」と小笠原教授は話す。
たとえば、経済産業省が2019年に公表した調査では、日本では2030年までに約80万人のIT人材が不足すると指摘されている。
また、多くの日本企業が時代遅れのコンピューターシステムに苦慮していると言われており、約60%が20年以上前のシステムを使用しているという。
小笠原教授さらには、日本企業では雇用喪失につながる可能性のあるAI開発よりも、失業率の上昇を避けようとする圧力の方が大きいと付け加えた。
「政府はAIやリスキリング、デジタルスキルについて語っているが、実際には完全雇用を維持することが最優先事項なので、人材をデジタルスキルに適応させるのは難しい」と、同教授は述べている。
しかし、採用活動には変化が見られる。一部の企業では新卒採用で「AIリテラシー」を重視するようになっている。
民間企業では、総合商社の兼松のような大企業が、今年3月に大学を卒業したばかりの、山口詩(うた)氏のような優秀な人材を採用している。
「私は仕事でAIをかなり頻繁に使っています」と山口氏は言う。「同僚の多くもよく使っています。上司へのメール作成、複雑な文書の要約、会議の録音と要約などに活用しています」
しかし、アメリカとは対照的に、日本では複数の工程を自律的に処理できるAIシステムはまだほとんど存在しないと、山口氏は言う。
しかし、先進的な考え方で知られる兼松は、現在はそうしたAIを導入している。
先述の小笠原教授は「日本における変化には限界がある」と述べ、「日本社会は痛みを伴わない改革を期待しているため、抜本的な改革は極めて困難だと言えるだろう」と付け加えた。
日本では「破壊的イノベーション」という言葉は忌み嫌われるかもしれない。だが、それがなければ、日本が必要とする生産性向上は実現しないだろう。















