スターマー英首相が辞任演説、官邸去り国王に辞意報告 バーナム新政権が誕生

黒い扉の住居の前に置かれた演台の前で演説するスターマー氏。背後には側近やスタッフが並んでいる

画像提供, EPA

画像説明, 英首相官邸の前で最後の演説をするキア・スターマー英首相(20日、ロンドン)
Published
この記事は約 6 分で読めます

イギリスのキア・スターマー首相は現地時間20日午前11時15分(日本時間20日午後7時15分)過ぎ、首相として最後の演説を行った。同氏はその後、バッキンガム宮殿に向かい、非公開の場で英国王チャールズ3世に辞意を報告した。同日昼過ぎには、17日に英与党・労働党の新党首に任命されたアンディ・バーナム氏が、国王との面会を経て新しいイギリス首相に就任した。

ダウニング街10番地の首相官邸の前でスターマー氏は、「私の仕事は終わった」と述べ、労働党党首としての6年半と首相としての2年の功績を強調した。そのうえで、バーナム氏への全面的な支持を約束した。

スターマー氏が宮殿を去った後に、次期首相となるバーナム党首がバッキンガム宮殿に入った。チャールズ国王にあいさつし、そこで国王から正式にイギリスの新首相に任命され、組閣を要請された。

バーナム氏はその後、首相官邸に到着し、官邸前で首相として初の演説を行う。

2022年に即位したチャールズ国王が組閣を要請した首相は、バーナム氏で4人目となる。

バッキンガム宮殿の一室で握手するスターマー氏とチャールズ国王

画像提供, PA Media

画像説明, スターマー氏は首相としての最後の仕事として、チャールズ英国王に辞意を報告した(20日、バッキンガム宮殿)
バッキンガム宮殿の一室で握手するスターマー氏とチャールズ国王

画像提供, PA Media

画像説明, スターマー氏の辞任後、バーナム氏がチャールズ国王と面会し、首相に任命された(20日、バッキンガム宮殿)

「私は潔く去る。私は笑顔で去る」

スターマー氏の演説に際し、官邸の前には同僚や多くの支持者らが集まった。首相官邸の黒い扉が開き、スターマー氏が現われると、大きな拍手と歓声で迎えられた。

スターマー氏は、「首相としての私の時代に幕を下ろそうとしている」、「私の仕事は終わった」と演説を始めた。

首相を務めたことは自身の「人生最大の栄誉」だったとスターマー氏は述べた。特に、労働党を「歴史的な敗北」から2024年の圧勝へと導いたことで、イギリスは「より強く、より公平な国」になったと付け加えた。

スターマー氏は、自分の任期中にイギリス経済はより強くなったと強調。内政については、公共サービスが改善し、子どもたちは貧困から救い出されつつあると述べた。また、移民数が減少した一方で、国際的な評価も「大きく向上した」と述べた。

しかし、自身が首相の職から得たもの、そしてこの仕事の「最も身の引き締まる側面」は、「この国の最善の部分が実際に機能している姿を、最前列の席で目にできること」だと述べた。

そしてそれは、軍人や国民保健サービス(NHS)の職員、あるいは地域社会で活動する人など、国に奉仕する人々の姿を通じて目にしてきたものだと語った。

さらにロシアのウクライナ侵攻にも言及し、「我々は今、価値観を理由に、我々を分断するためなら手段を選ばない敵に直面する世界を生きている」と同氏は述べた。

そして、そのような攻撃の下では、「我々の周囲にあるイギリスの偉大さ」を忘れないことが「極めて重要だ」と同氏は付け加えた。

スターマー氏はその後、バーナム氏にバトンを引き継ぐにあたり、「彼の成功を心から願っている。私は彼を全面的に支持する」と述べた。

また、「妻のヴィク」と家族、労働党全体のチーム、さらに首相官邸の職員と公務員全体に謝意を表した。

「政治は常にチームスポーツだ」と同氏は述べ、「奉仕する機会を与えてくれたイギリス国民に感謝する」と語った。

演説の締めくくりにスターマー氏は、「私は潔く去る。私は笑顔で去る。そして、私たちが成し遂げたすべてのことを誇りに思いながら去る」と述べた。

集まった人々から拍手が送られる中、同氏は妻ヴィクトリア氏と車に乗り込み、バッキンガム宮殿へ向かった。

動画説明, 【全訳】スターマー氏、英首相として最後の演説 「潔く笑顔で去る」

BBCのヘンリー・ゼフマン政治担当主任編集委員は、スターマー氏の演説は簡潔なものだったと解説。その内容は、この数週間にわたり同氏が繰り返し展開してきた主張と同様で、自分はイギリスを就任時よりも良い状態で後任に引き継いだと強調した。

先月の党首辞任の際の演説と比べると、目に見える感情の表出は少なかった。一方で、演説に立ち会った側近たちは強い感情をあらわにしていたと、ゼフマン編集委員は指摘した。

通りに並び拍手する人々の前でスターマー氏と妻のヴィクトリア氏が笑顔で抱き合っている

画像提供, PA Media

画像説明, 演説後に妻のレディ・ヴィクトリアと抱き合うスターマー氏。その後、多くの同僚に見送られてバッキンガム宮殿へ向かった(20日、ロンドン)

スターマー氏に辞任を求める圧力はしばらく前から高まっていた。支持率が低迷し、ピーター・マンデルソン前駐米大使の任命をめぐってスターマー氏の評価を落とす情報が明るみに出たことも影響した。

5月に行われた地方議会選挙は、スターマー氏にとって状況を好転させる最後のチャンスとされていたが、結果は労働党の惨敗だった。直後から、一部の閣僚や政務次官らが政権を離れる動きが相次いだ。

さらに、6月中旬に行われたイングランド北西部メイカーフィールド選挙区での補欠選挙で、バーナム氏が下院議員に復帰したことで、党内ではバーナム氏を次の首相に推すムードがいっそう高まった。

スターマー氏は当初、党首の座への挑戦を受けて立つ姿勢を示していた。しかし自らへの党議員らの支持は不十分だとの結論に至り、6月22日に辞任を表明した

その後の党首選では、前グレーター・マンチェスター市長のバーナム氏以外に候補者が現われず、同氏は中央政界復帰から1カ月余りで急速に権力を掌握するに至った。