【解説】 バーナム氏の政策について分かっていること 週明けに新たな英首相に

アンディ・バーナム氏の肩から上の写真

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英与党・労働党のアンディ・バーナム議員は、20日にイギリスの新たな首相に就任する見込みだ。

同氏は今週初め、労働党議員379人と、党と関係のあるほとんどの労働組合の支持を得て、唯一の党首候補としての地位を確固たるものにした。17日にロンドン中心部で開催される特別党大会で、正式に党首に任命される見通しとなっている。

前グレーター・マンチェスター市長のバーナム氏は、先月行われたイングランド北東部メイカーフィールド選挙区の補選で下院議員に復帰したばかり。急速に権力を掌握することになる。

現時点で判明している同氏の政策構想を解説する。

地方分権の促進

バーナム氏は、ロンドンの官庁街ホワイトホールから地方への史上最大規模の「権力の再分配」を約束している。イングランド北部のマンチェスター置かれる新たな首相官邸チーム「ナンバー10ノース」を通じ、住宅や交通などの分野で、イングランドの各地域により多くの権限が与えられることになる。

このチームは、ドイツ憲法の理念を参考に、イギリス全土で「平等な生活条件」を促進することを任務とする。

バーナム氏はまた、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドへの既存の権限委譲協定を拡大し、それぞれが「より深いレベル」で権限を掌握する新たな機会を提供すると約束している。

これは、同氏がスターマー前政権の政策を発展させる分野となる可能性がある。スターマー政権は、イングランドの主要都市圏以外にも地方市長の権限を拡大する過程にあった。

レイチェル・リーヴス財務相も、次回の秋季予算案で、地方の市長たちがそれぞれの地域で徴収された所得税の一部を管理できるようにする方法についてのロードマップを示す予定だった。

水とエネルギー

バーナム氏は、イギリスのすべての地域が水とエネルギー部門を「より大きな公共の管理下に置く」ことを望んでいると述べている。

これについてバーナム氏は、グレーター・マンチェスターのバス網を模倣できる可能性があると示唆している。グレーター・マンチェスターでは、民間事業者がフランチャイズ方式で運行サービスを競い合い、地方自治体が運賃、時刻表、路線を管理している。

しかし、水道会社やエネルギー会社にとっての同モデルが実際に何を意味するのかは、まだ明確にされていない。

バーナム氏は、自身の計画は必ずしも公益事業会社の完全国有化を意味するものではないと強調してきた。完全国有化には数十億ポンドもの費用がかかるからだ。

一方、同氏が直接的な公的所有を提唱している分野の一つがテムズ・ウォーターだ。イギリス政府は6月、債務超過に陥った同社に対する救済案に反対しており、既に国有化が検討されている。

住宅

バーナム氏は、「戦後最大規模」の公営住宅建設計画を約束しており、これは近年の建設ペースと比較しても大幅な増加を示唆している。しかし、その資金調達方法についてはまだ詳細を明らかにしていない。

バーナム氏が現政権の債務および支出に関する規則を順守すると約束していることを考えると、この公約の達成はかなりの困難が予想される。

同氏はまた、イングランドの向こう10年の低価格住宅予算390億ポンド全額を、公的に整備された住宅の中で最も家賃が安く助成比率の高い「ソーシャル・レント」住宅に振り向けるよう呼びかけている。

現在、この予算の一部は、家賃が市場価格に近い「アフォーダブル・レント(手頃な家賃)」住宅や、住宅購入支援スキームにも割り当てられている。

バーナム氏はこのほか、より多くの緑地を開発から守るために、都市部における高密度住宅開発を望んでいるとも述べている。

この分野における他の政策、例えば住宅購入権の制限などは、すでに現政権によって実行に移されている。

所得税

バーナム氏は、前回の選挙で労働党が掲げた所得税、付加価値税(VAT)、国民保険料の主要税率を引き上げないという公約を堅持すると述べつつも、他の分野では「公約の中に多少の柔軟性がある」と主張している。

メイカーフィールドでの補選の最中、バーナム氏は、所得税の課税対象を現行の年収1万2570ポンド(約275万円)から引き上げることについて「きちんと検討したい」とも述べていた。

同氏は以前、イギリスは労働に対する課税が過剰で、富に対する課税が不十分だと主張していた。このことから、株式や自宅以外の不動産などの資産売却益にかかるキャピタルゲイン税を引き上げる可能性があるとの臆測を呼んでいる。

インタビューの一つでは、バーナム氏は富裕税の導入を否定せず、次期政権はいつか「もう少し」税金を徴収する必要が出てくるかもしれないと示唆した。

そのうえで、時間をかけて財政状況を精査するとともに、「新たな分裂」を生み出すのではなく、「人々を結びつける」ことに注力したいと述べた。

バーナム氏は2010年ごろから、住民税と住宅購入者が支払う印紙税の両方を、土地の価値に対する新たな税金に置き換える案を提唱している。

社会福祉制度

バーナム氏は長年、社会福祉制度をより普遍的なものにするべきだという考えを支持してきた。

2023年の演説では、相続税を廃止し、新たな「国民介護税」を導入することで財源を確保できると示唆した。この新税は国民全員が支払うことになるが、「当然ながら、最も裕福な人々が最も多く支払うことになるだろう」と、バーナム氏は述べている。

英シンクタンク「ヘルス・ファウンデーション」は2024年、国民保健サービス(NHS)のような普遍的かつ包括的な医療モデルを実現するには、2035~36会計年度までに、約170億ポンドの追加資金が必要になる可能性があると推定した。

より安価な選択肢としては、スコットランド式の制度がある。これは、すべての人に一定の介護費用に対する基本的な保障を提供するものだが、イングランドで同様の制度を導入するには2035~36会計年度までに約70億ポンドの費用がかかると、同シンクタンクは述べている。

バーナム氏は補選中、以前の立場を「撤回」したわけではないと述べたが、この構想がどのように実現されるかについての詳細はまだ明らかにしていない。

イングランドの社会福祉制度をどのように改善するかという問題は、長年にわたり政治家を悩ませてきた。現状では、助成のある介護サービスの対象は、最も支援を必要とする一方で資産が最も少ない人々に限定されている。

労働党は野党時代に制度改革を公約したが、政権に就くと、資金調達に関する見直しを委託したものの、その報告書は2028年まで提出されない予定となった。バーナム氏は、その見直しを今年末に前倒しすると述べている。

移民

保守党のリシ・スーナク政権と同様に、労働党も査証(ビザ)要件を厳格化することで移民数を減少させてきた。

バーナム氏は補選での活動中、純移民数を「さらに減らす必要がある」と述べたが、具体的な目標値は設定していない。

同氏が労働党内部で対立する可能性のある分野の一つは、すでにイギリスに居住している外国人が永住権を取得するのに必要な期間を延長する案をめぐるものだ。

バーナム氏は今年初め、労働党議員に対し、アンジェラ・レイナー元副党首がこの変更の影響について警告したことに耳を傾けるよう促していた。

しかし補選では、先にシャバナ・マフムード内相が発表した計画の「大まかな方向性」を支持すると述べていた。

福祉と雇用

バーナム氏は、近年の医療費や障害者給付金の支出増加を受け、イギリスの福祉支出を「公平かつ持続的に」削減したいと述べている。

一方で、給付額や受給資格の条件を変更する計画は示していない。

その代わりに、バーナム氏は雇用支援と就労中のメンタルヘルス(こころの健康)支援を改善することで、失業給付申請者数を減らすことができると主張している。また、16歳から18歳までの若者に就労機会を保証したいとも述べている。

バーナム氏はまた、インフレ率、賃金上昇率、2.5%のうち最も高い率で毎年年金を引き上げる「トリプルロック」と呼ばれる公約を維持すると述べている。

ビジネス政策

バーナム氏は、鉄鋼、防衛、エネルギー、農業といった主要分野で「主権的な製造能力」を維持したいと述べ、イギリス企業が公共事業契約を獲得しやすくしたいと語っている。

補選の期間中、バーナム氏のチームは、パブや音楽会場の事業税を20%削減するとする政策文書を公表した。

それによると、その費用はアマゾンなどのオンライン小売業者が利用する市外の倉庫に対する増税によってまかなわれるという。

バーナム氏はまた、事業税の課税対象となる基準額を引き上げ、繁華街の多くの小規模店舗について、事業税を完全に免除することも望んでいる。

外交政策と防衛

バーナム氏は、自身が生きている間にイギリスが欧州連合(EU)に再加盟することを望んでいると述べているが、「(2016年の)国民投票を今、やり直すつもりはない」と強調している。

同氏は欧州諸国との「より緊密な関係」を追求し、EUとの既存の交渉における「進展を確固たるものにする」と公約した。

バーナム氏がEUとの関係についてどのような姿勢を取るかは、間もなく試されることになる。同氏の政権は今後、若者向けのビザ、食品規制、そしてイギリスをEUの炭素価格制度に再接続させる計画など、一連の進行中の交渉を引き継ぐ。

また、6月初めにスターマー政権のジョン・ヒーリー国防相の辞任につながった防衛費問題も、新たな頭痛の種となるだろう。

間もなく退任するキア・スターマー首相は、在任中の最後の決定の一つとして、政府の他の部門の支出を削減することで、今後4年間で軍事費を150億ポンド増額する計画を発表したが、詳細についてはバーナム氏に任せた。

また、バーナム氏がドナルド・トランプ米大統領にどう対応するかも重要な課題となるだろう。バーナム氏は、イギリスはアメリカとの「良好な関係」を築くべきだと述べつつも、「もし意見が合わない場合は、そう伝える用意がある」としている。

選挙制度改革

バーナム氏は、労働党の次期選挙公約に、イギリスの小選挙区制を比例代表制に置き換えるという公約を盛り込む必要性について、「自党を説得するよう努める」と述べている。