【解説】 プーチン氏、ウクライナでの戦争で妥協を拒み続ける ロシアの世論はどうなのか

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スティーヴ・ローゼンバーグBBCロシア編集長
ウラジーミル・プーチン大統領のロシアに公式スローガンがあるとしたら、一体どんなものだろうか。
セルゲイ・ラヴロフ外相はかつて、インタビューで私にこう語った。「ロシアはありのままだ。それを見せることを恥じたりはしない」。
これはぴったりだ。
だが私は最近、ロシアのベテラン歌手ナデジダ・バブキナ氏から、その最新版ともいえるべき言葉を聞いた。
プーチン大統領から賞を受けた後、バブキナ氏はロシア大統領府(クレムリン)の聴衆にこう語った。「ロシアは決して降伏しない。私たちには驚くべき多民族的な遺伝暗号があるからだ。(中略)それは私たち全員を結びつけている」。
「それが嫌いな人は、出て行って毒をあおればいい」と彼女は付け加えた。
この「出て行って毒をあおればいい」という一文は、さまざまな意味で2026年のロシアを要約している。断固としていて、言い訳もしなければ、妥協も許さない。
まるでプーチン氏自身のようだ。
ウクライナへの全面侵攻を命じて以来、クレムリンの指導者は、ロシアの隣国を攻撃するという自身の決定に後悔も反省も示していない。そして、その敵対行為をやめるつもりもない。
ロシアは今週に入り、ウクライナ全土で再び大規模なミサイルとドローン攻撃を開始した。
この攻撃は、世界にロシアをアピールするために開かれている、毎年恒例のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムの前夜に行われた。
欧米の著名な投資家らや政治家らは、とうの昔に参加をやめている。しかし、主催者によると、130を超える国と地域からの代表団が出席するという。
外国からの投資を求める国にとって、隣国との4年以上にわたる戦争が最高の宣伝になるとは思えない。
だが、先ほど確認したとおり、「ロシアはありのまま」なのだ。フォーラムがあろうとなかろうと、ウクライナへの攻撃は続いている。
プーチン大統領の戦争に関する公の立場は揺るぎない。引き続き、ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク州とルハンスク州)全体の支配権をロシアに譲渡するよう、ウクライナに要求している。
プーチン氏は変わっていない。しかし、クレムリンは一つの点で変わっている。
ドナルド・トランプ米大統領に関することだ。
ロシアの当局者らは昨年、同国が提示した条件での和平協定締結を、トランプ氏が手助けすると確信しているようだった。言い換えれば、トランプ氏がウクライナに対し、ロシアの最大主義的要求を受け入れるよう圧力をかけるだろうとみていた。
昨年の夏に米アラスカ州アンカレッジで行われた米ロ首脳会談の後、ロシアの高官らは数カ月間、「アンカレッジの精神」について叙情的に語り続けた。まるでトランプ氏とプーチン氏が、ロシアの利益のために、ウクライナについて相互理解に達したかのような話しぶりだった。
しかし、和平協定は成立しなかった。
ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は最近、ロシア国営テレビに「アンカレッジの精神については知らない」と語った。「私はそのフレーズを使ったことがない」と。
それは、「アンカレッジの精神」が、消え去ってはいないにしても、少なくとも消え始めたことの表れだった。

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これは、プーチン氏の明らかな不満をあおっている要因の一つだろう。
他にもたくさんある。
クレムリンの指導者が短期的な「特別軍事作戦」として構想していたものは、血なまぐさい消耗戦へと変わり、今年で5年目を迎えた。2022年2月以降、ロシアは戦場で甚大な損害を被り、経済でも大きなダメージを受け、技術も後退した。
また、戦争はどんどん身近なものになった。現在、ウクライナのドローンはロシア領土の奥深くまで届いている。石油精製所などのエネルギーインフラが、定期的に標的にされている。先月には、ウクライナのドローンによるモスクワ州への大規模な攻撃により、ロシアの首都周辺の防空システムが突破される可能性が浮き彫りになった。
ウクライナからの攻撃を懸念し、毎年5月9日に赤の広場で行われる戦勝記念日パレードは縮小された。
4年以上にわたる戦争、そして数千件に及ぶ国際的制裁が、ロシア経済に多大な負担をかけている。財政赤字は拡大し続け、経済活動は停滞している。
では、クレムリンはこれらの課題にどのように対応してきたのか?
「特別軍事作戦」の規模を縮小したわけではない。
それとは程遠い。
最近のロシアによるウクライナ各地への大規模な空襲から判断すると、ロシアは対応を拡大させている。
また、その責任を受け入れているわけでもない。ロシアは、ウクライナのドローンが、ロシア占領下のウクライナ東部スタロビルスクにある学生寮を攻撃したと非難。最近ウクライナを空爆しているのは、この件への対応だとしている。公式発表によると、この攻撃では21人が殺害された。
ウクライナ軍は、スタロビルスクにあるロシアの精鋭ドローン部隊「ルビコン」の本部を攻撃したと発表している。ウクライナの主張する攻撃対象が、ロシアが特定した建物と同じなのか、ウクライナは明らかにしていない。
戦闘の終結は相変わらず遠いようだ。
プーチン大統領はここ数年、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムへの参加を利用して、自らの現在の世界観を伝え、西側諸国への批判を繰り返してきた。今年は国際報道機関の編集長らと会ったり、基調講演をしたりする予定だ。
プーチン氏は今年のフォーラムを利用して、ウクライナに関する立場を転換したとほのめかすだろうか? 今のところ、その予兆は何もない。
しかしロシア国内では、戦争を終わらせる時が来たかどうかについて、公の議論が高まっている兆候がある。
この国のメディア環境が厳しく統制されている中でも、私はその証拠を目にしている。
政治学者のワシリー・カシン氏は最近、ロシアの外交政策トップと密接な関係を持つ専門誌「グローバル問題の中のロシア」で、次のように結論づけている。
「現段階で、ウクライナの反ロシア政権を排除するという目標は、西部を含むウクライナ全体を長期間にわたって完全に軍事占領しなければ、根本的には達成できない。ロシアにとって、これは技術的に不可能だ」
数日後、政権寄りのタブロイド紙モスコフスキー・コムソモーレツは、政治評論家のアレクサンダー・ノソビッチ氏の以下の言葉を引用した。
「専門家コミュニティーは、目標達成まで特別軍事作戦を続けることに賛成する人々と、それを終わらせる時だと信じる人々の間で分かれている。最悪のシナリオは敗北ではなく、終わりのない特別作戦だからだ」
同じ紙面で弁護士のドミトリー・クラスノフ氏は、ロシアでは歴史を通じて、「敗北した戦争と屈辱的な停戦が、定期的に新たな突破口や改革、そして驚くべきことに新たな勝利をもたらしてきた。(中略) 甚大な地政学的損失が、輝かしい勝利よりも役に立つこともあった」と主張した。
この国では、勝者と勝利の国としてのロシアという概念を中心に国是が形作られてきた。そのロシアで、このような記事が紙面に掲載されているのは驚きだ。
これは、ロシアが目標を達成せずにウクライナとの戦争を終わらせるべきだとほのめかしていたのだろうか。
数日後、私はその記事をインターネットでもう一度読もうとした。
「エラー 404 ページが見つかりませんでした」
画面に現れたのはこの一文だった。アクセスが拒否されたのだ。
議論はあるのかもしれない。だが、そこには明らかに限界がある。








