トランプ氏「インフレが大好きだ」と発言 米消費者物価は3年ぶりの高い伸び

画像提供, EPA
アーチー・ミッチェル 経済記者
ドナルド・トランプ米大統領は10日、「インフレが大好きだ」とホワイトハウスで記者団を前に発言した。これに先立ち米労働省労働統計局が同日発表した5月の米消費者物価指数(CPI)は、前年比4.2%上昇し、約3年ぶりの高い伸びを記録した。
CPIの上昇は3カ月連続。4月のCPIも前年同月比で3.8%上昇し、2023年5月以来の高い水準を記録した。アメリカとイスラエルがイランを攻撃して始まった戦争の影響で、エネルギー価格が高騰し、これが物価上昇の要因となっている。
CPIは、特定の月の物価が前年の同月と比較してどれだけ上昇したかを示す指標。連邦準備制度理事会(FRB)は、長期インフレ目標を 2%と設定している。
5月のCPIの上昇について記者団に質問されたトランプ氏は、「すごくいい。数字は最高だった。自分が本当に好きなもの、何か知っているか? 自分はインフレが大好きだ」と述べた。
続けてトランプ氏は、イランとの戦争が終われば物価は「石のように下がる」、「この紛争が終われば(中略)石油は以前のところまで落ちる」と約束した。同日午後、アメリカはイラン爆撃を再開した。
トランプ氏はさらに、米軍はこれまでにイランから「何百万バレル」もの石油を取り出す夜間作戦を展開したと主張。これによって、石油価格は多少下がったと述べた。
トランプ氏は、今年初めにアイオワ州を訪れた際にはガソリンが1ガロン(約3.78リットル)あたり1.85ドルで売られているのを見たと言い、「間もなくこの水準に戻る」と付け加えた。
原油の世界的な価格指標のブレント原油は依然として、対イラン開戦前の水準を大幅に上回って取引されている。
アメリカ自動車協会(AAA)の統計によると、アメリカのレギュラーガソリン1ガロンあたりの平均価格は現在4.15ドルで、トランプ氏がイラン攻撃を開始した2月28日の2.98ドルから大幅に上昇した。
トランプ氏は2024年大統領選では、インフレ抑制を重要課題とすると公約していた。
10日の発言が物価上昇を歓迎するかのように広く受け止められたことから、トランプ氏はこの後、米紙ニューヨーク・ポストに対し、「インフレが大好きだ」と言う自分の発言は文脈から外れて受け止められたと主張。自分は、イランとの戦争にもかかわらずインフレ率が「予想よりはるかに低い」という意味で発言したのだと述べた。
一方、野党・民主党の重鎮、チャック・シューマー上院院内総務は、「インフレが大好きだ」と発言するトランプ氏の動画をソーシャルメディアに投稿し、「彼はあなたたちを果てしなく見下している」と書いた。
トランプ氏は先月にも、イランとの停戦合意を模索するにあたりアメリカ国民の経済状態が自分の判断にどう影響するかという記者団の質問に対し、「イランについて話す際に大事なのはただひとつ、向こうは核兵器を持てないということだけだ。アメリカ人の経済状態について自分は考えない」と発言し、広く批判された。

画像提供, Getty Images
トランプ氏は以前から、インフレ率は一時的に上昇しているだけで、戦争が終結すれば急速に落ち着くとの見方を示している。
近年のアメリカのインフレ率はジョー・バイデン政権下の2022年半ばに、9.1%に達した。今年5月の4.2%は、それよりはるかに低い。
しかし、今年11月に中間選挙を控えるアメリカでは、有権者が経済を最大の懸念事項として挙げているだけに、物価上昇はトランプ氏にとって政治的な課題となっている。
インフレ率が高くなると、消費を抑制し物価を安定させるためにFRBが金利を引き上げる可能性が高まる。
5月のガスと電気を含む光熱費総額は、前年比で約25%上昇した。増加のほとんどは、ガソリン価格の上昇によるものだった。
5月のCPI上昇は、飛行機のチケット、パーソナルケア、医療、レクリエーション、コミュニケーションの価格上昇も反映している。
多くのエコノミストは、たとえイラン戦争が素早く解決されたとしても、戦争開始前のホルムズ海峡の物資通航量が回復するには2027年までかかる可能性があると警告している。
こうした状況で、5月22日に新しいFRB議長に就任したばかりのケヴィン・ウォーシュ氏のもと、初の連邦公開市場委員会(FOMC)が16日に予定されており、新議長が金利政策をどのように決定するのか注目されている。
インフレ率が目標金利を大幅に上回ると、FRBは通常、金利を引き上げる。その結果、借入コストが押し上げられ、資金の流れと物価上昇が制限され、インフレが抑制される。
ウォーシュ新議長が就任するまで、トランプ氏はジェローム・パウエル前議長とFRBに再三、金利引き下げを求めていた。
複数のエコノミストは、来月も金利が現在の3.5~3.75%の間の水準に留まると予想している。ただし、インフレ率が上がり続けるという証拠がさらに積みあがれば、FRBは利上げを余儀なくされる可能性があると警告する人もいる。
イギリスの経済調査会社キャピタル・エコノミクスの北米担当主任エコノミスト、スティーヴン・ブラウン氏は、利上げを目指すFRB理事たちにとって、5月のCPI上昇だけでは「材料不足」だと述べた。
他方、英資産運用会社ウェルス・クラブの投資マネージャー、アイザック・ステル氏は、「今日のデータと先週の健全な雇用統計を合わせれば、(金利引き上げが)最も論理的な結論」だと話した。











