イラン、ホルムズ海峡の開放は「不可能」 米・イスラエルの「停戦違反」が続く限り

曇り空の下、さびついた船舶が海に浮かんでいる

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画像説明, イラン南岸バンダルアッバス近くに停泊する船舶(22日)。バンダルアッバスは、ペルシャ湾とホルムズ海峡に面するホルモズガーン州の州都
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マックス・マッツァ、ポール・ブラウン、バーンド・デブスマン・ジュニア

アメリカとの和平協議でイラン代表団を率いるモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長は22日、アメリカとイスラエルが「露骨に停戦違反」をしているため、ホルムズ海峡を開放するのが「不可能な」状況だと述べた。

ガリバフ氏は、この「停戦違反」には米海軍によるイラン港湾封鎖や、「あらゆる戦線における」イスラエルの「好戦的行動」が含まれると、ソーシャルメディアに投稿。イラン港湾封鎖については、世界経済を「人質」に取る行為だと主張した。

イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、イランはいまも交渉に前向きだとする一方で、「約束への違反や(港湾)封鎖、脅しが、真の交渉において大きな障害となっている」と付け加えた。

21日の早い段階では、アメリカとイランが今週中にパキスタンで、2回目の和平協議を行うとの見方が出ていた。しかしこれまでのところ、協議は始まっていない。

2回目の協議でも米代表団を率いる見通しのJ・D・ヴァンス米副大統領は、アメリカ国内にいる。

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官はその後、トランプ氏が発表した停戦延長について、延長の期限は設定していないと説明。トランプ氏は、米海軍が現在行っているイランの港湾封鎖に「満足」しており、「イランが非常に弱い立場にあることを理解している」と、レヴィット報道官は付け加えた。

そして、「まさに今、トランプ大統領には手札がある」とした。

記者団から、戦争はいつ終わるのかと問われると、レヴィット氏はトランプ氏次第だと答えた。「合衆国と米国民にとって最善の利益になると感じた時に(トランプ氏は)そうするだろう」。

イラン側の協議責任者であるガリバフ国会議長の最新の発言は、危険が伴う、国際的に重要な海上輸送路のホルムズ海峡で衝突が続く中でのもの。

動画説明, ホルムズ海峡で米・イランの対立続く イランは船舶を攻撃し拿捕、自国関連船の航行も続く

イランは22日、ホルムズ海峡で貨物船2隻を「拿捕(だほ)」したと発表した。「検査」を行うためだとしている。同海峡では先に、貨物船3隻が攻撃を受けたと報じられていた。

BBCヴェリファイ(検証チーム)が、船舶追跡サイト「マリントラフィック」のデータを分析したところ、ホルムズ海峡で攻撃を受けた貨物船3隻のうちの1隻「ユーフォリア」は、アラブ首長国連邦(UAE)の港付近で停泊しているもよう。

海上警備会社ヴァンガードによると、UAE船籍のユーフォリアは、イランから西8カイリの位置で攻撃を受けた。船体の損傷や乗組員の負傷は報告されていない。

イランはユーフォリアについてコメントしていないが、ほかの2隻「フランチェスカ」と「エパミノンダス」については拿捕したとしている。2隻とも、攻撃で損傷を報告している。

イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の海軍は声明で、貨物船2隻が「無許可で活動」し、「度重なる違反行為」を行ったと主張。ホルムズ海峡を「ひそかに」離れようとしたほか、航行システムを改ざんしたとも非難した。

声明はまた、イランはホルムズ海峡の通航状況を「監視している」とも警告し、「違反者」には「断固とした」措置を取るとした。

IRGC系のタスニム通信はその後、イランの特殊部隊が2隻に突入する様子だとする映像を公開した。

直近の位置情報によると、攻撃以降、2隻ともそれほど移動していないとみられる。

一方、マリントラフィックのデータでは、ユーフォリアは攻撃を受けたと報じられた時間の後に南方へ戻り始め、英国夏時間(BST)22日午後2時(日本時間同10時)ごろには、UAEのホール・ファカン港から約13カイリの位置に到達していたことが示されている。

ギリシャのヨルゴス・ゲラペトリティス外相はその後、ギリシャ船籍のエパミノンダスが攻撃を受けたことを認めた。

ゲラペトリティス氏は米CNNに対し、「ギリシャの貨物船に対する攻撃があったことは認めるが、イランがこれを拿捕したかどうかは確認できない」と語った。

こうした中、アメリカ国防総省は22日、米海軍のジョン・フェラン長官の「即時」退任を発表した。退任理由は明らかにされていない。フン・カオ海軍次官が長官代行を務める。

米軍をめぐっては、ピート・ヘグセス国防長官が2日に、ランディ・ジョージ陸軍参謀総長に退任を求めたばかり

ホワイトハウスが、パキスタンでのイランとの協議再開や、対イラン攻撃の再開について具体的なスケジュールを示さないのは、戦略的な判断による可能性が高い。こうすることで、イランに対する港湾封鎖や経済的締め付けを行うための大きな柔軟性を、トランプ政権は得られることになる。

ホワイトハウスのレヴィット報道官は、イランの「現実主義者」が強硬派の反発を受けることなく和平案を提示できるようにするためだとしている。

これは同時に、トランプ氏が、全面的な軍事行動への回帰を避けることを可能にもする。多くのアメリカ人は現状に辟易(へきえき)しており、全面的な軍事行動を取る事態になれば、すでにピリピリしている国際市場を動揺させかねない。

米国務省近東局の元イラン・イラク担当次官補代理アンドリュー・ピーク氏は、「現時点での戦略的不利は、イランが勝利の尺度をホルムズ海峡の支配に置いていることだ」と述べた。

ピーク氏はBBCに対し、「明るい側面」として「ガソリン価格が一部地域で1ドルほど上がったものの、トランプ大統領が株式市場を効果的に管理している」ことを挙げた。

レヴィット報道官はホワイトハウスで記者団に対し、イランがホルムズ海峡で船舶2隻を拿捕したことについて、アメリカはこれを停戦違反とは見なしていないとも述べた。

「これらはアメリカの船舶でもなければ、イスラエルの船舶でもない」