米特使らのキーウ未訪問は「無礼」 ゼレンスキー氏が地元メディアに

濃い色のジャケットを着たゼレンスキー氏とウィトコフ氏が横並びになり顔を向け合っている。背後にスーツ姿の人がいる

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画像説明, ウクライナのゼレンスキー大統領(左)とアメリカのウィトコフ大統領特使
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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ大統領特使とドナルド・トランプ大統領の娘の夫ジャレッド・クシュナー氏がロシアの首都モスクワをたびたび訪問している一方で、ウクライナの首都キーウを一度も訪れたことがないことについて、「無礼だ」と受け止めていると述べた。

ウクライナでの戦争の終結に向けた協議に参加しているウィトコフ氏とクシュナー氏は、停戦協議が勢いづいていた昨年末と今年1月にモスクワをそろって訪問した。ウィトコフ氏はこれまでにモスクワを8回訪れており、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とも何度も会談している。

一方、ウィトコフ氏もクシュナー氏も公的な立場でキーウを訪問したことは一度もない。

ゼレンスキー氏はこの日、ウクライナメディアの取材の中で、「(彼らが)モスクワに行ってキーウに来ないのは無礼だ。ただそれだけで無礼だ」と述べた。

「移動面での複雑さは理解している。(中略)もし彼らが来たくないなら、他の国で会うこともできる」

ゼレンスキー氏は今月初め、2人がウクライナを訪問する予定だと述べていたが、米・イスラエルのイランとの戦争が継続するなかで、この訪問は実現しなかった。

ロシアとウクライナ、アメリカによる3者協議は、2月中旬が最後となっている。

その協議から2週間もたたないうちに、アメリカとイスラエルはイランへの攻撃を開始し、5年目に突入しているウクライナでの戦争の終結から関心は離れた。ウィトコフ氏とクシュナー氏は共に、イランとの停戦協議に参加する米代表団の一員でもある。

ゼレンスキー氏はこの日の取材で、アメリカの関心が中東に向いていることを認めたが、「しかしいずれにせよ、私たちにとってはアメリカと協力を続けることが重要だ」と付け加えた。

これまでの協議

ウクライナでの戦争をめぐっては昨年11月、米ロの当局者がウクライナ側に不利な条件を含む和平案を策定していたことが明らかになったことで、停戦に向けた協議に拍車がかかった。

ウクライナは協議への関与を求め、これを受けて複数の会合や首脳会談が相次いだ。

ロシアとウクライナは今年2月までに、前線の位置や停戦監視を含む「軍事上の問題」の一部について合意に達したと表明していた。

一方で、他の問題は未解決のままだ。たとえば、ウクライナは、ロシアが開戦以降に強制移送したウクライナの子どもの帰還を求めている。ロシアは、ウクライナでの「政権交代」を要求している。

しかし、最大の争点はウクライナ東部ドンバス地方の地位だ。戦争終結の見返りとしてウクライナの主権領土を要求するロシアの姿勢は、ウクライナにとっては受け入れがたいもので、双方とも譲歩する意思を見せていないため、協議は行き詰まり状態にある。

ウクライナのキリロ・ブダノフ大統領府長官は2月、「我々は、完全な対極にある二つの立場の間で妥協点を探している」と述べた。「我々はまだそれを見つけていない」。

その上で同長官は、最終的にはウクライナもロシアも、「二つのうちどちらかを認めなければならない。解決策を見いだしてこの戦争を終わらせるか、解決策を見いだせなかったことを等しく認めたうえで互いの殺害を続けるかだ。我々はそれを、非常に効率的かつ専門的に行っている」と付け加えた。

ウクライナの戦況を示した図。東部から南東部にかけてのルハンスク、ドネツク、ザポリッジャ、ヘルソンの4州に、ロシア軍が占領、一部占領、あるいは占領を主張している地域が広がる。さらに南部に、2014年にロシアが併合したクリミアもある。出典は米戦争研究所とアメリカン・エンタープライズ研究所の「重大脅威プロジェクト」(日本時間4月21日午前6時時点)

ロシアは2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始。戦争は5年目に突入し、ウクライナの人々にとって日常の現実となっている。

現在、ウクライナ東部の広範囲がロシアの支配下にある。両国の部隊は、北東部ルハンシクから南部ヘルソンにかけて伸びる長い前線で戦闘を続けている。

また、ウクライナ各地の都市は定期的に空からの攻撃を受けており、ロシアは数百のドローンとミサイルを使用し、市民を殺害し、インフラに被害を与えている。

ロシアは先週、700発以上のドローンとミサイルを使った波状攻撃を展開。少なくとも18人が殺された

一方、ウクライナは長距離ドローンを使い、ロシアのエネルギー関連インフラへの攻撃を強化。国境から遠く離れたロシア領内にある港湾や工場、補給基地、石油ターミナルなどを標的にしている。

ロイター通信の推計によると、こうした攻撃の結果、4月初めにはロシアの輸出能力全体の少なくとも20%が稼働不能となった。国内総生産(GDP)も引き続き減少しているが、イランでの戦争に起因するエネルギー危機が、現時点では石油収入を押し上げ、ロシア財政的利益をもたらしている。

ウクライナ経由する石油パイプラインが復旧

ゼレンスキー氏は21日、ロシア産の原油をウクライナ経由でヨーロッパに供給するソ連時代の石油パイプライン「ドルジバ」が復旧したと発表した。

ウクライナは、同パイプラインが今年1月のロシアによる空爆で損傷したと説明していた。欧州連合(EU)加盟国の多くはロシア産原油への依存から脱却したが、ハンガリーとスロバヴァキアは現在も購入を続けており、供給が停止していた。

この供給停止を受け、ハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相は、EUによる追加の対ロ制裁を阻止し、ウクライナ向けの重要な900億ユーロ(約16兆円)の融資を阻んできた。

パイプラインの再開で、ハンガリーがこの拒否権を解除すれば、EU各国は11日にも、ウクライナにとって極めて重要なこの融資を承認する可能性がある。