【解説】 フーシ派による攻撃、中東紛争の拡大と世界経済へのさらなる打撃への懸念を高める

バブ・エル・マンデブ海峡の人工衛星画像

画像提供, NASA Worldview/Reuters

画像説明, イエメンのフーシ派からの攻撃は、紅海の重要航路バブ・エル・マンデブ海峡で混乱を引き起こし、世界貿易をさらに制限する可能性がある
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フランク・ガードナー安全保障担当編集委員

イエメンの反政府勢力フーシ派は、紅海で船舶を攻撃したと主張した。既に不安定な中東情勢をさらに悪化させる恐れがある。

フーシ派は先に、船舶に対し、紅海の狭いバブ・エル・マンデブ海峡から引き返すよう強制することで、ヨーロッパからアジアへの主要な海上航路を遮断すると脅している。

また、ペルシャ湾の要衝ホルムズ海峡をめぐって米・イラン間の攻撃が続くなか、アメリカは22日、サウジアラビアとの民生用の原子力協力協定に合意。軍拡競争の懸念を引き起こしている。

中東はますます危険になっているのだろうか?

残念ながら、2026年は中東の一部地域にとって、これまでで最も暴力的な年のひとつとなっている。

米中央軍(CENTCOM)は13夜連続でイランに対する空爆を実施した。

同軍は23日夜の声明で、「ホルムズ海峡を航行する民間船員や商船に対するイランの脅威をさらに軽減するため、イランの軍事司令部、ドローン保管施設、通信網、沿岸の監視拠点、海上能力を攻撃した」と述べた。

平時であれば犯罪率が低く平穏で、税負担も最小限にとどまる平和な土地である湾岸アラブ諸国は、海を隔てた重武装の近隣国イラン・イスラム共和国からの絶え間ない攻撃に耐えながら生きることを余儀なくされている。

そして今、イランの支援を受けたイエメンのフーシ派が、サウジアラビアとの2022年の停戦合意が破綻したとみられる中で、紛争に参入した。

今週に入り、紅海でサウジアラビアの船舶2隻がミサイル攻撃を受けた。一方でフーシ派は、サウジアラビアの港を避けるよう船舶に警告した後、他の10隻を撃退したと主張。紅海の南端とアラビア海のアデル湾を結ぶ戦略的に重要なバブ・エル・マンデブ海峡を通過する船舶の航行を妨害している。

これは問題だ。イランがホルムズ海峡を事実上封鎖したことで、世界のエネルギーと肥料の供給が混乱しているなか、重要な海上貿易にさらなる障害が重なり、間もなく世界経済に影響を与えることになるからだ。

サウジアラビアは米・イランの戦争から距離を置こうとしている。バーレーンやクウェート、ヨルダンは今月、イランのドローンや弾道ミサイルによる攻撃を受けているが、サウジアラビアはこれらをほぼ免れてきた。

ホルムズ海峡が閉鎖されたことで、サウジアラビアは、東部の油田から紅海沿岸のヤンブー・アル・バハル輸出ターミナルまで、広大な国土を横断する東西パイプラインを通じて、1日に数百万バレルの原油を輸送し、輸出の混乱を部分的に緩和できていた。

サウジアラビア産の原油を積んだタンカーはその後、ヤンブー港から南下してイエメン沖とバブ・エル・マンデブ海峡を通過し、インド洋へと出ることで、アジアの顧客への大量輸送が可能になった。

しかし、もはやそうではない。少なくとも、フーシ派が沿岸を通過する船舶を脅迫している限りは。

ドナルド・トランプ米大統領は「フーシ派を何とかする」と誓ったが、それはこれまでうまくいったことがなく、合意がなければ今回もうまくいかないだろう。

フーシ派の海上封鎖警告を受けてUターンした船舶、ロドス号、ミカ号、ニュー・プライム号、リュウ・ジャン・コウ号の進路を赤線で示したサウジアラビア近海の地図

フーシ派はイエメン最北部のサアダ市周辺を拠点とするシーア派集団だ。 2014年に中東を揺るがしたアラブの春の混乱に乗じて南下し、首都サヌアを制圧した。その後、戦略的に重要な港湾都市ホデイダを含むイエメンの人口密集地の大部分を掌握した。

サウジアラビアは、イランの支援を受けた同組織が自国の南部国境地帯で権力を握ることを望まなかったため、正統ではあるものの追放されたイエメン政府を支援する目的で、2015年にフーシ派との戦争に突入した。

サウジアラビアは、西側諸国から供給された圧倒的に優れた空軍力によって、フーシ派をすぐにでも交渉のテーブルに引きずり出せるだろう、そして反乱軍が速やかに和平を求めるだろうと予想していた。

しかし、フーシ派は長年にわたる空爆によって民間人に大きな犠牲が出たにもかかわらず、決して降伏せず、今日では権力をしっかりと掌握している。

2023年から2025年までの2年間、フーシ派はパレスチナ・ガザ地区のパレスチナ人を支援するためと主張し、イスラエルと関係があるとする船舶を攻撃した。またその際、制圧に動こうとした英米の軍艦に対し、強力な最新ミサイルを発射した。

ホルムズ海峡周辺のイラン沿岸と同様、イエメンの紅海沿岸の山々には、無数の洞窟や、トンネル、そして短時間で船舶攻撃に使用できる弾薬の隠し場所が存在する。

フーシ派のこの作戦は、世界の海上輸送に大きな混乱と輸送コストの上昇を引き起こし、海上貿易を保護するための英米の軍事介入を招いた

そして今、こうした事態が再び起こるのではないかという懸念が広がっている。

頭部を覆うものを被った、真剣な表情の男性が、肩にバズーカ砲らしきものを担いでおいる。周囲にも同じ武器を持った男性たちがいる

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画像説明, フーシ派はイランと緊密な同盟関係にあり、イエメンの大部分を支配している。

では、こうしたすべての事態は、より広い中東地域にどのような影響を与えているのだろうか?

まず、かつて壊滅的な内戦に苦しめられたイラクとシリアという2国が、少なくとも以前と比べれば、現在ではおおむね平和で安定した状態にあることを指摘しておくことが重要だ。

一方、パレスチナのガザでの戦争は形式上は停戦状態にあるものの、ガザの住民は空爆で犠牲になり続けている国際法上違法なイスラエル人入植地も、占領下のヨルダン川西岸全域で拡大している。イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦争は、両国が交渉を継続しているため、一時的に中断されている。

しかし現在、アナリストたちが最も懸念しているのは、湾岸地域とアラビア半島だ。

また、トランプ氏はイランとの戦争に巻き込まれてしまい、そこから抜け出す方法が見つからないようだ。

米軍による連夜の空爆は、イラン革命防衛隊(IRGC)にホルムズ海峡の支配権を放棄させるには至っていない。

IRGCは空爆を受けるたびに、米軍基地を受け入れている近隣のアラブ諸国に報復攻撃を行い、これらの国々とアメリカとの不和をあおろうとしている。

経済的な観点から見ると、時間は刻々と過ぎている。湾岸諸国の石油、ガス、肥料、その他の必需品がホルムズ海峡を通過して市場に届かない日が1日増えるごとに、世界のサプライチェーンに圧力がかかり、最終的には価格にも影響が出る。

これに加え、バブ・エル・マンデブ海峡もしばらく閉鎖されるとなれば、世界経済への影響はさらに深刻化するだろう。

軍事的な観点では、22日に発表された米・サウジアラビアの合意によって緊張はさらに高まり、米国企業がサウジアラビアの国内原子力発電計画の開発を支援する道が開かれた。

サウジアラビアがこれを核爆弾開発への第一歩として利用する兆候は一切ない。

しかし、トルコとエジプトが抑止力と防衛手段を求めて核開発活動を強化する可能性があり、将来的に地域全体で軍拡競争を引き起こす恐れがあるという懸念は依然として残っている。

中東は近年の歴史において幾度となく暴力の激化に見舞われてきた。今回の事態はそれらの中で最悪のものではない。

しかし総合的に見ると、アメリカとイランが永続的かつ包括的な合意に至らない限り、この地域は長期にわたる不安定な状態が続く可能性が高いことを示唆する、いくつかの懸念すべき要素が存在している。