モロッコからスペイン領セウタへ6万人押し寄せる スペイン首相は人身売買業者を非難

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北アフリカにあるスペインの飛び地領土セウタへ、モロッコから約6万人が押し寄せた問題について、スペインのペドロ・サンチェス首相は7月31日、人身売買組織の仕業だと非難した。地元メディアによると、移民流入による騒乱で少なくとも57人が死亡した。
サンチェス首相は移民の大量流入を、「スペインの領土保全に対する侵害」と非難した。
イタリアは対抗策として、スペイン相手にシェンゲン協定を一時停止した。シェンゲン協定は、欧州連合(EU)加盟国を中心とする29カ国の間で、原則的に出入国審査なしに各国間を自由に行き来できるとする取り決め。
モロッコからの移民流入は、スペイン最高裁判所が、セウタおよびスペインのもう一つの飛び地メリリャを目指す移民を、海上で足止めしても、そのままモロッコへ強制送還できないと判決を下した後に、一気に増加した。
31日にセウタに入ったサンチェス首相は、今回の移民急増は犯罪組織がスペイン最高裁の最近の判決を意図的に誤って解釈したことが原因だと述べた。
「モロッコ当局と協議した結果、人身売買マフィアが最高裁判所の判決を自分たちの都合の良いように解釈し、それが瞬く間に広まったことが、明らかになった」
首相はさらに、スペイン政府はモロッコとの国境警備の強化を検討する方針で、モロッコ当局は不法入国者の送還に協力していると付け加えた。
スペイン当局によると、31日夕までに4万8000人以上が自主的にモロッコに帰国した。
セウタに入った男性の一人はロイター通信に対し、モロッコへ戻ると話した。「ここは全く良くないし、楽しい場所でもない。ここでは大勢が死んでいる。まだここに来ていないなら、頼むから来ないでくれ。来ないでくれ」。

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セウタとメリリャは、EUとアフリカ大陸を結ぶ唯一の陸続きの国境。モロッコの北海岸に位置するセウタは、ジブラルタル海峡によってスペイン本土と隔てられている。長年にわたり、ヨーロッパを目指す移民が集まる場所となっていた。
夏になると、ソーシャルメディアなどを通じて大集団となった人々が、セウタを目指す現象が繰り返される。
セウタとメリリャは、長年にわたりモロッコとスペインの間で争点となってきた。両都市は、EUとアフリカ大陸が直接接する唯一の陸上国境になっている。

セウタのフアン・ヘスス・ビバス市長は、押し寄せた移民の数は市の人口の約70%に相当すると話した。最新の地元統計によると、市の人口は約8万3600人。スペイン内務省はBBCに対し、30日未明から市内に入った人数は5万人と推定していると話した。
スペインは現在、セウタとその姉妹都市メリリャの治安強化のため、軍隊を派遣している。

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「良い未来を与えられない」
セウタの地元当局は越境しようとする移民が増加したことを受け、スペイン政府に支援を要請していたが、30日には国境管理が機能不全に陥り、現地の混乱は高まった。
両親に会うためにセウタを訪れていたカルメン・ゴンザレス・ベルムデスさんは、BBCに対し、「とんでもない」日だったと話した。
「何千人もの人が水着姿でずぶ濡れになりながら、海から上がってくるのを見た」とベルムデスさんは言い、「ほとんどの人は、より良い未来を求めて来る、善良な人だと分かっている。しかし、私たちはあの人たちに、そのような未来は与えられない」と付け加えた。
ビクトル・オルティス・ソトマヨールさんはBBCに対し、「こんな光景は見たことがない」と述べ、街は「あらゆる広場や通りに移民がひしめき合っている。ほとんどは食料を求めている」と話した。
「店は数軒しか開いていなかったが、あまりに大勢が殺到したせいで、結局は警察が閉店を勧告した」とソトマヨールさんは言い、「友人や家族も私も、みんな家の中にいる。怖いので、外出はしていない」と話した。
上述のベルムデス氏は、前にもセウタに移民が殺到した時のことに触れ、「2021年には、警察や軍が何らかの行動を起こしていた。昨日は、警察や軍は街頭にいたけれども、何もしていなかった。なので、まずはとても怖い感じがする」と話した。

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若者の反政府デモが続くモロッコ
セウタに入国した人々のほとんどは若い男性だが、中には女性や子供、さらには乳幼児もいる。スペイン当局は、30日にかけて24時間の間に不法入国した人のうち、少なくとも7000人が未成年者だと推定している。
セウタに入ろうとする移民は通常、海岸沿いのさらに奥から数キロの距離を泳いで渡ってくる。しかし今回は、国境のフェンスに容易に近づくことができた様子。当初は、桟橋の岩場を歩いて端まで行く者もいたが、ほとんどの人は反対側の海岸まで泳ぐ必要があった。
この時点でモロッコ国境警備隊がどこにいたのか、またなぜ移民集団を解散させたり阻止したりしなかったのかは、わかっていない。
失業率の高いモロッコでは昨年、若者による反政府デモが複数回発生した。若者たちは、より良い機会と公共サービスの改善を求めていた。
BBCヴェリファイ(検証チーム) は、国連が発表した移民データを調べた。それによると、今年7月15日までに2826人がセウタに越境し、さらに181人がメリリャ経由で入ったという。
これら2つの地域に越境する移民の数は現時点ですでに、近年と比較しても多い。2025年の流入者は994人、2024年は476人、2023年は467人だった。

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イタリアはスペインとの自由移動を停止
イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、セウタからの映像を「衝撃的」と表現し、「無制御な不法移民の流入は、ヨーロッパの国境の安全に対する明確な脅威」だと示しているとソーシャルメディア「X」に書いた。
イタリアはその後31日に、シェンゲン圏協定に基づくスペインとの間の人の自由移動を停止した。両国は陸路で国境を接していないため、これは事実上、航空便のみに適用される。実質的な影響は、乗客への追加検査に限られる様子。
スペインのホセ・ルイス・アルバレス外相は、イタリア政府首脳たちが政治目的のために移民問題を利用していると非難。スペインと友好関係にある協力国は「政治的な扇動ではなく欧州の連帯を示すべき」だと批判した。同外相は31日にイタリア大使をマドリードへ召喚した。
チェコ共和国のアンドレイ・バビシュ首相も、スペインのシェンゲン協定加盟資格の一時停止を求めた。
サンチェス首相はこれに対してXで、「連帯と共感は任意だが、欧州条約とデータの尊重は必須だ」と答えた。
一方、かねてスペインとサンチェス首相に批判的なドナルド・トランプ米大統領は、セウタの状況を「大惨事」と呼び、「法律の不備とずさんな管理」が原因だと非難した。
EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、セウタから発信される映像は「容認できない」もので、「直ちに終わらせなくてはならない」と述べた。
フィンランドのマリ・ランタネン内相はイタリアのメローニ首相を支持し、スペインは国境警備に失敗したと批判した。
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相はモロッコに対し「不法移民を直ちに引き取る」よう要求した。










