FWケインがバロンドール受賞、イングランド代表選手として25年ぶり

タキシード姿のハリー・ケインが前を向いて、バロンドールにキスしている
画像説明, ハリー・ケインはバイエルン・ミュンヘンでの3シーズン目に、クラブのシーズン最多得点記録を更新した。
Published
この記事は約 7 分で読めます

エムリン・ベグリー(BBCスポーツ)

今年のサッカー男子ワールドカップ(W杯)北中米大会でイングランド代表の得点源だったFWハリー・ケイン(33)が26日、世界年間最優秀選手賞(バロンドール)を受賞した。イングランド選手の受賞は25年ぶり。(文中一部敬称略)

この日、英ロンドンで授賞式が行われた。夜にはケインの成功を祝して、ウェンブリー・スタジアムのアーチが金色にライトアップされた。

ケインは現在、独ブンデスリーガのFCバイエルン・ミュンヘン所属。スタンリー・マシューズ(1956年)、ボビー・チャールトン(1966年)、ケヴィン・キーガン(1978年、1979年)、マイケル・オーウェン(2001年)に続き、イングランドで5人目の受賞者となった。イギリスではこのほか、スコットランドのデニス・ロー(1964年)と北アイルランドのジョージ・ベスト(1968年)が受賞している。

バロンドールは、仏サッカー誌「フランス・フットボール」が選ぶ候補者の中から、サッカー記者の投票で受賞者が決定する。今年の2位はフランス代表でスペインのレアル・マドリードに所属するキリアン・エムバペ、3位はスペイン代表で同バルセロナ所属のラミン・ヤマルだった。

ケインはDAZNのインタビューに対し、「ここまで来るとは思っていなかった人も多いだろうし、自分でも、ここまで来るとは思っていなかったかもしれない」と語った。

「特にキャリアの初期は、たくさんの浮き沈みを経験した。今の一部の選手たちのように将来スーパースターになるとは、自分は思われていなかった」

「私は辛抱強く待ち、努力し続ける必要があった。多くの場合は自分の心との戦いで、それを乗り越えなくてはならなかった。自信と決意を示す必要があった」

「こうした姿勢が、最高レベルに達した後も向上し続け、より良くなろうと思わせてくれていると思う」

イングランド代表のトーマス・トゥヘル監督は、ケインの受賞を「大変喜ばしい」と述べ、彼の成功は「大きな名誉」だと称賛した。

英王室のウィリアム皇太子も、ケインを「素晴らしいキャプテン」で「傑出した選手」だと評した。

ケインは2025/2026シーズン、クラブの試合51試合で計61ゴールを挙げ、バイエルンの選手が1シーズンに挙げた最多得点記録を更新した。イングランド代表の試合を含めると、65試合で73ゴール、さらに8アシストを記録した。

ヨーロッパのトップ5リーグに所属するクラブで、1シーズンにこれ以上のゴールを決めた選手は、これまで1人しかいない。

一方で昨シーズン、ケインはW杯とチャンピオンズリーグの両方で活躍したものの、どちらもチームは準決勝で敗退。サッカー界最大の栄誉の両タイトルを獲得できなかったにも関わらず、バロンドールを受賞した形となった。

バイエルンの選手としては、1981年のカール=ハインツ・ルンメニゲ以来の受賞だった。

トロフィーを前に、目を閉じて笑顔で上を向いたタキシード姿のケイン
画像説明, バロンドールを受賞して感無量の様子のケイン(26日、ロンドン)

記録破りの昨シーズン

トロフィーという点では、ケインは昨シーズン、ドイツで2冠を達成した「だけ」に過ぎないかもしれない。

しかし、彼のキャリアにおけるトロフィー獲得数はこれで倍以上になった。彼はその前のシーズンにもブンデスリーガで優勝していた。

しかも、個人の成績という点では、これまでのバロンドール最高順位が10位だったケインは、昨シーズンは誰にも負けない活躍を見せた。

バイエルンでの公式戦における61ゴールは、ヨーロッパの主要5リーグの他のどの選手よりも19ゴール多かった。

これは、11年前にクリスティアーノ・ロナウドがレアル・マドリードで記録した61ゴール以来の最多得点記録だった。

ケインは昨シーズン、ブンデスリーガで36ゴールを挙げ、2位に17ゴールもの大差をつけて得点王となった。チャンピオンズリーグでは14ゴールを記録した。

ドイツカップでは10ゴールを挙げ、決勝のシュトゥットガルトとの試合では勝利に貢献するハットトリックを達成した。また、ドイツスーパーカップでも1ゴールを決めている。

FCバイエルン・ミュンヘンで、1シーズンにこれほど多くのゴールを決めた選手は過去にいない。バイエルンにはこれまで、ゲルト・ミュラー、ルンメニゲ、そして近年ではロベルト・レヴァンドフスキ(ポーランド代表)といった伝説的なストライカーが在籍している。

一方イングランド代表としては、ケインは昨シーズン、W杯での6ゴールを含む12ゴールを挙げ、通算ゴール数を73に伸ばした。

ヨーロッパのトップリーグにおいて、1シーズンにこれ以上の得点を挙げた選手は、2011/2012シーズンにバルセロナとアルゼンチン代表で合計82得点を挙げたリオネル・メッシただ一人だ。

元イングランド代表ストライカーのアラン・シアラーは先に、BBCスポーツに対し、「バロンドールの受賞者はハリー・ケインであるべきだ」と述べた。

「ここ12~18カ月の彼の成績は、バイエルンとイングランド代表にとってまさに驚異的だ。だからこそ、彼が受賞するべきだ」

元イングランド代表選手のダニー・マーフィーも、「(ケインの)得点力は驚異的で、目覚ましいものだ。キャリアの中でも最高のシーズンの一つを送っている。トロフィーを獲得できれば、彼にとって大きなご褒美となるだろう」と話した。

「彼はバイエルン・ミュンヘンに移籍して以来、素晴らしい活躍を見せている。チームに非常によく適応し、ここ12カ月間は世界最高のセンターフォワードだった」

優勝なしでのバロンドール受賞、どれほど珍しいのか

バロンドールは、1956年の創設から1995年に全世界選手に門戸が開かれるまで、ヨーロッパの選手のみが受賞資格を有していた。

1995年以降、W杯が開催された7年のうち4年で、バロンドールは優勝国の選手に授与されている。

だが、ケイン以前にメッシ、クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル代表)、ルカ・モドリッチ(クロアチア)の3人が、W杯で優勝していない年にバロンドールを受賞したことがある。

一方、過去20年間で、バロンドールがW杯、チャンピオンズリーグ、欧州選手権/コパ・アメリカのいずれのタイトルも獲得していない選手に贈られたのは、今年を含めてわずか5回。ケインは、メッシ(3回)と元ブラジル代表のロナウドに続く快挙となった。

今年W杯を優勝したスペイン代表からは、ヤマルが有力候補の一人だったが、受賞はならなかった。

昨年の受賞者ウスマン・デンベレはこの年、パリ・サンジェルマンの一員としてチャンピオンズリーグで優勝した。

ケインは2年連続で受賞できるか

バロンドールを受賞したばかりのケインについて、2年連続の受賞は可能かどうか、推測が飛んでいる。

ケインは今シーズン、バイエルンでの開幕12試合で10ゴールを挙げている。 イングランド代表としてネーションズリーグ4試合で6ゴールを挙げたのも加えると、これまでの16試合で合計16ゴールとなる。

バイエルンは今シーズン、ブンデスリーガとチャンピオンズリーグで無敗を維持している。

もしバイエルンが三冠を達成し、ケインが1試合に1ゴール程度のペースで得点を重ね続けるなら、W杯も欧州選手権もコパ・アメリカもない2026/2027年シーズンについて、ケインを抜きに考えるのは難しいだろう。

メッシやロナウド以外で2年連続受賞を達成したのは、1988年と1989年のマルコ・ファン・バステンが最後だ。

一方、ヤマルは過去2年とも2位に終わっており、今度こそ3度目の正直にしたいと考えているだろう。

ヤマルは今シーズン、バルセロナでのラ・リーガとチャンピオンズリーグの13試合で10ゴール10アシストを記録するなど、絶好調のスタートを切っている。

そしてバルセロナは現在、チャンピオンズリーグ優勝の最有力候補だ。これが最終的に、バロンドール受賞者を決定する要因となる可能性もある。

もしヤマルが来年、バロンドールを受賞すれば、20歳という史上最年少の受賞となるだろう。

エムバペも、クラブと代表で計13試合に出場して14ゴールを挙げており、初のバロンドール受賞に自信を持っているだろう。

最年少受賞者は、1997年に21歳で受賞したブラジルのロナウドだ。

バロンドール受賞者を輩出したことのない英アーセナルとパリ・サンジェルマンは現在、チャンピオンズリーグ優勝の有力候補となっている。