【米中間選挙2026】 トランプ氏は不正投票が「横行」と主張 だが証拠によると極めて珍しい

右側にダークスーツ姿のトランプ氏、左側に投票ブースが並ぶ写真が配置されている
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ジェイク・ホートン、BBCヴェリファイ(検証チーム)

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、不正投票の報告が有罪判決につながった場合、報告者に100万ドル(約1億5800万円)の報奨金を渡すと発表した。

11月3日の中間選挙を前に、トランプ氏は、投票の安全性が疑わしいとの考えを示している。郵便投票や、投票権をもたない非市民の投票によって、不正が「横行」していると主張している。

しかし、研究では、そうしたことは実際には極めて珍しいとされる。

BBCヴェリファイ(検証チーム)は、関連する証拠と、投票制度に関するトランプ氏の変更案を検証した。

郵便投票をどう変えようとしているのか

トランプ氏は長年にわたり、郵便投票は不正の横行につながるという根拠のない主張を繰り返してきた。

一方でトランプ氏は、中間選挙では郵便投票をするよう、共和党員に呼びかけてもいる。また、自分自身も過去に郵便投票をしたことがあると述べている。

トランプ氏は、郵便投票を障害者、病人、軍人、旅行者のみに認める法案を議会で通そうとしてきた。だが、これまでのところ成功していない。

ほとんどの州では、理由を明らかにせずに郵便投票ができる。2024年大統領選挙では、全国で約4800万人が郵便投票をした。

トランプ氏は今年3月、政府機関が作成したリストに記載されている有権者にのみ投票用紙を配達するよう郵政公社に指示する大統領令に署名した。この大統領令は、郵便投票で各州が同じ封筒を使うことも義務付けた。

しかし、連邦最高裁は9月、この大統領令の差し止めを認めた。中間選挙を前にした時期のこうした変更は「恣意(しい)的で気まぐれ」だと断じた。ただ、選挙後に改めて検討する可能性はあるとした。

郵便投票の有効性を確認する規則は、州ごとに異なる。だがどの州も、投票用紙に記載された有権者情報を、州が保管している情報と照合して投票資格を確認する。ほとんどの州は署名も確認している。

郵便投票の不正、証拠から何がわかるのか

アメリカの複数の選挙に関する研究では、郵便投票における不正は極めてまれとされる。

米政策研究シンクタンクのブルッキングス研究所は、2016、2018、2020、2022年の選挙を調べた結果、見つかった郵便投票の不正は1000万票につき平均約4件だったとしている。

この調査では、有罪判決に至った選挙不正を記録している、米シンクタンクのヘリテージ財団のデータベースを使った。同財団はかつて、トランプ氏に同調的だった。

BBCヴェリファイは、このデータベースで過去20年分を調べた。すると、郵便投票の不正で325件の有罪判決が記録されていることがわかった。

米統計学会による2020年の研究では、すべての有権者に郵便投票用紙を送付している8州について不正投票の事例を調べたところ、郵便投票が不正投票のリスクを全体的に高めている証拠は見つからなかった。

例えばオレゴン州では、2000~2020年の間に郵便投票用紙が1億枚以上送付されたが、不正投票は40件だったという。

身分証明の規則をどう変えようとしたのか

トランプ氏は、投票権のない非市民による投票が横行していると主張している。2024年大統領選の前には、何百万人もの移民を民主党が入国させ、「その人たちにどんどん投票させている」と述べた。

連邦選挙で非市民が投票するのは違法だ。拘禁、罰金、国外追放などの罰を科される可能性がある。

トランプ氏が議会の可決を求めている投票法案は、有権者に対し、投票前に政府発行の写真付き身分証明書の提示を義務付ける。さらに、有権者登録と、市民権の継続確認の際には、市民権を証明するものの提示を義務付ける。

投票ブースの後ろで3人が投票している。左端の人物の足元には犬が座っている
画像説明, 今回の中間選挙では、すでに何百万人もが期日前投票を済ませている

有権者の身分証明の要件を厳しくすることに対しては、投票率の低下につながるとの懸念の声がある。パスポートや政府発行の写真付き身分証明書を持っていない人もいると考えられるからだ。

法律関連の米超党派組織キャンペーン・リーガル・センターの投票権の専門家ジョナサン・ディアス氏は、「多くの国とは違い、私たちの国には政府発行の全国的な身分証明カードがない。運転免許証が最も一般的だが、移民としての状態を証明するものではない。そのため、ほとんどのアメリカ国民が持ち歩いている身分証明だけでは、投票できない」と言う。

米リベラル系シンクタンクのブレナン司法センターによる2023年の調査によると、投票権をもつ年齢のアメリカ国民の約9%にあたる約2130万人が、市民権の証明書をすぐに提示できない状況にあるとされる。

一方、有権者の身分証明に関する現行法で、目立った問題は生じていないと主張する人もいる。

米保守系シンクタンクのケイトー研究所の選挙専門家ウォルター・オルソン氏は、「有権者の身分証明に関連する法律の影響を学者が調べると、保守派が主張する不正も、進歩派団体が警告する有権者に対する抑圧も、証拠はあまり見当たらない」と述べる。

共和党が与党の州のいくつかは、ここ数年、有権者の身分証明書の提示義務を強化している。ブレナン司法センターの調査では、2024年大統領選以降、より厳格な身分証明書の提示義務を定める制限的な投票法が21件制定されている。

非市民の投票、証拠から何がわかるのか

いくつかの研究では、連邦選挙で非市民が投票した事例は、ごくわずかとされる。

ヘリテージ財団のデータベースによると、そうした行為で有罪判決を言い渡された事件は、2005~2025年に24件あった。

ロイター通信は今年7月の記事で、連邦裁判所に持ち込まれた、非市民の投票に関する裁判を分析。過去30年間で129人が刑事訴追され、うち73件で有罪判決が出されていたとした。

ブルッキングス研究所シニアフェローのダレル・ウェスト氏は、「非市民の投票が違法ということ自体が、そもそも非常に強力な抑止力になっている。多くの人が自分の移民ステータスを心配している状態で、投票という行為は極めて高リスクだからだ」と述べる。

「違法に投票した非市民が大勢いるという証拠は、これまで一切ない。まして、選挙に影響を与えたと示せるだけのものはない」

すでに登録されている非市民はどうなるのか

トランプ氏は、外国人の各種資格が確認できる連邦政府のデータベース「SAVE」を利用し、非市民の疑いがある有権者を特定し、有権者名簿から削除するよう、各州に働きかけている。

このデータベースでは、帰化した市民や過去に連邦政府に連絡を取った非市民の情報にアクセスできる。政府機関が個人について、移民ステータスを基に政府給付の受給資格を確認するのを支援するため、1980年代に導入された。

一部の人は、このデータを使って有権者名簿から人々を削除することの妥当性を疑問視している。データが古い可能性や、のちに市民になった人が含まれている可能性があるからだ。それでも連邦最高裁は、トランプ政権がこの目的でデータを使用することを認めた。

黒い手袋をはめた人が郵便投票用紙の入った封筒の束を手にしている
画像説明, アメリカではすべての州で何らかの形式の郵便投票が認められている。2024年大統領選挙では有権者の29%がその方法で投票した

前出のケイトー研究所のオルソン氏は、「連邦データベースは、その限界をきちんと理解すれば、有権者名簿を更新しようとする州にとって非常に貴重なものとなり得る」と述べる。「その意味では、情報共有を義務付けるトランプ政権の計画の一部は、肯定的なものだ。だが、データベースの内容に明らかな欠陥や不正確さが存在したままなのに、それを信頼できるものとして扱うよう州に求める(計画の)後半部分は問題だ」。

このデータベースの利用は各州の任意だ。最近利用した州では、非市民が見つかったケースは少ない。

ジョージア州では、過去30年間の有権者名簿に、非市民の可能性のある人物が432人記載されていることが判明した。

国土安全保障省はネヴァダ州に対し、不当に有権者として登録された非市民だとして185人の名前を提供した。だが州当局は、その全員が実際は市民だとわかったとした。

ホワイトハウスは、ニュージャージー州の例があると指摘する。同州では、州の運転免許当局のソフトウエアの不具合により、2023年6月~2024年6月に非市民約6600人を有権者として登録した。州当局は、実際に投票したのは400人未満で、現在は全員システムから削除されたとしている。

連邦司法省は、中間選挙を前にカリフォルニア州に対し、「非市民の登録者である可能性が高い」2万人からの郵便投票を集計しないよう求めた。この要求はその後、控訴裁によって無効とされた。

同省はその2万人のうち28人を起訴した。違法に有権者登録をしていた非市民たちだとしている。