チャールズ英国王が米議会で演説、大西洋間の同盟の重要性を強調 夕食会では数々の冗談も

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イギリス国王チャールズ3世は28日、アメリカの連邦議会で演説を行い、両国の「欠かすことのできない」パートナーシップの価値について語った。その後、ホワイトハウスで開かれた夕食会でのスピーチでも、英米間、そして北大西洋条約機構(NATO)の同盟関係の重要性を強調した一方、ドナルド・トランプ大統領と共に、多くの冗談を飛ばした。
チャールズ国王は議会議事堂での演説で、「より不安定で、より危険な」時代のなかで、両国は共に立つ必要があると警告。「われわれは、極めて不確実な時代に、そしてヨーロッパから中東に至るまでの紛争という、多大な課題を突きつける時代に直面している」と述べた。
そのうえで、「両国がお互いの国民のため、そして世界中の全ての人のために、無私の奉仕において改めて共に尽くすようにしましょう」と強調した。
イギリスの君主がアメリカの連邦議会両院でこのような演説を行ったのは、先代のエリザベス2世が1991年に訪米した時以来で、35年ぶり。
中東での紛争を筆頭に、英米の政治的緊張が深まる中で行われたチャールズ国王の演説は、即位後最大の外交イベントとなった。議場からは、国王が話し始める前からスタンディングオベーションが送られた。演説中にも大きな拍手が国王の言葉を何度もさえぎり、スタンディングオベーションは合計で12回に及んだ。
国王の演説は、「(アメリカとイングランドは)あらゆる点で共通している、もちろん言語を除いて」という、オスカー・ワイルドの小説の引用から始まった。
国王はその後、このところ英米間の摩擦の原因にもなってきた中東と欧州での紛争について順に触れた。さらに、今月25日にホワイトハウス記者協会の夕食会で起きた発砲事件にも触れ、政治的な暴力が民主主義を脅かしていると話した。
国王はさらに、「(アメリカが独立した)1776年の精神を思えば、私たちは常に意見が一致するわけではない。その点については、おそらく合意できるだろう」と、両国の相違を認めた。しかし冒頭のこうした発言は、両国が足並みをそろえれば、「自国民の利益のためだけでなく、すべての人々のために」大きなことを成し遂げることができる、という最終的な結論への布石となった。
演説の中で国王は、権力の行使は「抑制と均衡の対象となる」べきだと指摘。これがマグナ・カルタ(大憲章)に明記されたイギリスの法的伝統であり、アメリカの合衆国憲法の基盤的原則となったと述べ、スタンディングオベーションを受けた。
国王は自分がキリスト教を信仰していることについても触れたつつ、一方で「異なる信仰を持つ人々が、互いの理解を深めていく中で育まれる深い敬意に、私は励まされている」と述べた。
「だからこそ、この激動の時代において、私たちが協力し合い、国際的なパートナーとも連携して、鋤(すき)を剣に持ち替える事態を食い止めることができるよう、願ってやまない」と国王は呼びかけた。
国王はさらに、大西洋をまたぐパートナーシップに言及。NATOが加盟国を防衛するために動員されたのは、2001年9月11日の米同時多発攻撃の直後の一度きりだと強調した。
また、自分の軍務経験を切り口として、両国間および米欧の安全保障と情報分野の関係がもたらす利益について語った。
国王は、長年にわたり重視してきた気候変動問題にも触れ、「大西洋の深海から、破滅的に溶けつつある北極の氷冠に至るまで、アメリカ軍とその同盟国の献身と専門性は、NATOの中核をなす。互いの防衛を約束し、市民と利益を守り、共通の敵から北米とヨーロッパを安全に保っている」と述べた。
演説の最後に国王は、「アメリカの言葉は、独立以来そうであったように、重みと意味を持っている」、「この偉大な国家の行動は、さらに大きな意味を持つ」と述べた。

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エプスティーン元被告や被害者には言及せず
チャールズ国王の訪米については、議会演説の中で性犯罪者のジェフリー・エプスティーン元被告(故人)に言及するのか、あるいはその被害者に触れるのか、という点がことさらに注目されていた。
国王は、いずれにも触れなかった。「両国の社会に、あまりに悲劇的に存在する、さまざまな害の被害者を支援する必要性」に触れたのが、最も近いと思われる言及だった。
チャールズ国王の弟アンドリュー・マウントバッテン=ウィンザー元王子とエプスティーン元被告の関係はスキャンダルとなっており、国王は今回の訪米で元被告の被害者らと面会すべきだとの声が上がっていた。
また、昨年まで駐米大使を務めていたピーター・マンデルソン卿も、米司法省が公開した資料に名前があったことで、労働党政権を巻き込む政治スキャンダルへと発展している。
エプスティーン元被告をめぐる一連の問題についてはこれまでのところ、アメリカよりもイギリスで波紋が広がっている。アメリカ政界ではほとんど誰も、元被告との関係による不利益を受けていない。
トランプ氏に同名の潜水艦の鐘を贈呈

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夕食会では、ドナルド・トランプ大統領が先に乾杯のスピーチを行い、ホワイトハウスにチャールズ国王とカミラ王妃を迎えることは「大変な名誉だ」と述べた。
「議会で素晴らしい演説を行ったチャールズに祝意を表したい」とトランプ氏は述べ、「あの人は民主党議員を立ち上がらせた。私には決してできないことだ」と冗談を飛ばした。
大統領は、この日の夕食会は、独立宣言250周年を祝うためのものだと述べ、「この国にとって非常に大きな節目だ」と語った。
また、建国の父たちにとって、独立戦争はイギリスの遺産を否定するためではなく、「それを取り戻し、完成させる」ための戦いだったと述べた。
「独立宣言は、時代を超えた奇跡だった。自治と人間の自由のため、広く波及した革命の火をつけた」と、大統領は述べた。
トランプ氏は中東での紛争にも簡単に言及し、イランとの戦争について、アメリカは「非常によくやっている」と述べ、「我々は軍事的にあの特定の相手を打ち負かした」と主張した。
さらに、「これはチャールズも、私以上に同意していることだが、我々はその相手に決して、核兵器を持たせないつもりだ」と発言した。
大統領はそのうえで、アメリカとイギリスは、「共産主義、ファシズム、そして専制の勢力に対し、反抗的かつ勝利者として共に立ち続けてきた」とも述べた。
続いて登壇したチャールズ国王も、トランプ氏が進めてきたホワイトハウスの改修についての冗談でスピーチを始めた。
「昨年のウィンザー城訪問の後、東館に施された『調整』に、どうしても目が留まってしまう」と国王は述べた。
また、1814年にイギリス軍がホワイトハウスに放火した出来事に触れながら、「残念ながら、我々イギリス人も、1814年にホワイトハウスの不動産再開発を試みたことがあった」と続けた。
国王はさらに、「実際あなたは最近、アメリカがいなければヨーロッパ諸国はドイツ語を話していただろうとコメントしていたが……」とトランプ氏に問いかけ、「……恐縮だが、もし我々がいなかったなら、皆さんはフランス語を話していただろう!」と冗談を重ねた。国王はすぐに、「もちろん、我々はフランスのいとこたちを大変愛しているが」と付け加えた。
アメリカ独立前の北米大陸では、英仏が植民地戦争を繰り広げていた。
国王はここで、1957年に行われた故エリザベス女王のアメリカ訪問に言及した。
「女王に課された任務の中でとりわけ重要だったのは、中東危機の後、我々の関係に再び『特別』という言葉を取り戻すことだった」と国王は述べた。
「ほぼ70年が経過した今、同じようなことが起きるとは想像しがたい。しかし、目に見える事柄、そして目に見えない事柄の双方において、この関係がいかに今なお重要かを理解するのは、難しいことではない」
そのうえで国王は、NATOと、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS」の同盟が、「技術面および軍事面での協力を深めるため」に重要だと、改めて強調した。
スピーチの中でチャールズ国王は、1944年に進水し、太平洋戦争で戦ったイギリス海軍の潜水艦「トランプ」の艦橋に設置されていた鐘を、トランプ大統領に贈ると述べた。
国王は、この贈り物は両国が共有してきた歴史と「輝かしい未来」を示すものだと説明し、「もし我々に連絡を取る必要があれば、どうぞこの鐘を鳴らしてほしい」と、トランプ氏に語りかけた。
この艦名はトランプ氏とは無関係だが、国王夫妻の公務を管理する英バッキンガム宮殿は演説に先立つ声明で、この鐘は「この関係の再生を記念する友情の象徴」だと説明した。
声明ではまた、この贈り物が、1976年にエリザベス女王がアメリカを訪問した際に、独立200周年を記念して「リバティ・ベル(自由の鐘)」の複製を贈ったことを想起させるものだとも指摘した。
最後に国王は、この夕食会は「ボストン茶会よりは、かなり良いものだ」と冗談めかして感謝を伝え、スピーチを終えた。
この夕食会には、大統領の閣僚や国王の側近、アメリカの連邦議会議員、連邦最高裁判所判事など、数十人が招かれた。
また、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、アップル最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏、米FOXニュース司会者グレッグ・ガットフェルド氏、ローラ・イングラム氏、ブレット・ベイアー氏などの顔も見られた。共和党重鎮のリンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州選出)も出席した。











