コーミー元FBI長官が当局に出頭、画像投稿でトランプ氏の命を脅したとして起訴

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アメリカの連邦捜査局(FBI)長官を務めたジェイムズ・コーミー氏は29日、昨年5月に貝殻の写真を短期間インスタグラムに投稿したことがドナルド・トランプ大統領の命を脅かしたとして起訴されたことを受け、当局に出頭した。

コーミー氏はこの日午後、ヴァージニア州の裁判所に短時間出廷。罪状認否はせず、発言もしなかった。

同氏のパトリック・フィッツジェラルド弁護士は、今回の起訴は恣意(しい)的かつ報復的だとして、コーミー氏が公訴棄却を求める意向だと述べた。また、同氏はトランプ氏に反対の立場を表明したために標的にされたと主張した。

ウィリアム・フィッツパトリック判事は、コーミー氏に対する起訴内容を読み上げた。BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、コーミー氏は権利の告知を聞きながらうなずき、退廷の際には家族に向かってほほ笑んだという。

CBSはまた、司法省がコーミー氏の保釈条件の設定を求めたが、判事は不要だとして退けたと報じた。

コーミー氏が昨年インスタグラムに投稿した画像には、砂浜に並べられた貝殻が「86 47」という数字が形作られていた。「86」は俗語で「取り除く」という意味があることから、検察はこの投稿が第47代大統領のトランプ氏に対する暴力を助長するものだと主張している。

検察はコーミー氏を、大統領の命を奪い身体的危害を加えるという脅迫をした罪と、、大統領を殺害するとの脅迫を州をまたぐ商業媒体で故意に伝達した罪で起訴している。それぞれの罪の量刑は、最長で禁錮10年。

コーミー氏は、数字の意味を知らなかったとして不正行為を否定。検察が政治的な動機で動いていると非難している。

コーミー氏は28日に公開したビデオ声明で、起訴と闘う決意を表明。「これで終わりではないだろう(中略)私は今も無実で、私は今も怖がっていない、今も連邦司法制度の独立を信じている」と述べた。

トランプ氏を長年批判してきたコーミー氏を司法省が起訴したのは、これが2回目。連邦地裁は昨年11月に、1回目の起訴を無効とした。

一方、トランプ氏は29日の記者団とのやりとりで、コーミー氏のことを「心が曲がった男」と批判。「犯罪について何らか知識がある人なら、86の意味を知っている」、「マフィア用語で殺せという意味だ。マフィアは誰かを殺したい時にこの用語を使って、あいつを86しろと言う」と述べた。

コーミー氏の投稿が脅威となっていたかと思うかと問われると、トランプ氏は「おそらく」と返答。「コーミーのような人たちは、政治家などにものすごい危険をもたらしていると思う」と述べた。

起訴を疑問視する法律家や議員も

一部の法律の専門家や議員は、この起訴の説得力を疑問視している。

トム・ティリス上院議員(共和党)は29日、「砂浜での写真以上の根拠がある」ことを願っていると記者団に話した。「そうでなければ、基準をかなり低く設定したために後で後悔することになる新たな事例になる」。

ジョージ・W・ブッシュ政権で司法次官補を務めたジミー・グルレ元連邦検事は、今回の起訴を「アメリカの刑事司法制度にとっての恥」と評した。

一方、司法省のトッド・ブランチ長官代行は29日、この起訴で有罪に持ち込めるかと記者団から尋ねられると、捜査は「過去1年間にわたって」行われたと主張。「この国で陪審がどう判断するかについて口にする検察官がいるとしたら、その人物は宣誓に背いていることになる」と述べた。

そして、起訴の背景に政治的動機があるとの指摘は当たらないと強調し、「トランプ大統領の生命を脅かすような行為は犯罪であり、みんな極めて注意すべきだ。ただそれだけだ」とした。

コーミー氏は、2016年米大統領選挙へのロシア介入について捜査を開始した後、トランプ大統領に解任された。それ以降、トランプ氏は同氏の起訴を繰り返し求めており、トランプ政権による起訴は今回が2回目。

1回目は昨年9月下旬で、連邦大陪審は、コーミー氏が2020年9月の議会証言で虚偽の説明をし、議会手続きを妨害したとして、同氏を起訴した。

この起訴を受けてコーミー氏は昨年10月、法廷で無罪を主張。翌月、キャメロン・カリー連邦地裁判事は、担当検事の任命が「無効」だったとして、コーミー氏に対する起訴を退けた。

判事は、起訴を担当したヴァージニア州のリンジー・ハリガン検事に、大陪審に起訴案件を提出する権限がなかったと判断した。ハリガン氏は元ホワイトハウス補佐官で、検察官として事件を担当した経験はなかった。

一方で判事は、政府があらためてコーミー氏を起訴する余地を残した。