トランプ氏、ロシア産ディーゼル燃料の輸入を発表 プーチン氏への贈り物だとウクライナは非難

画像提供, Anna Moneymaker/Getty Images
レイチェル・クラン・ビジネス記者、アンソニー・ザーカー北米特派員
アメリカのドナルド・トランプ大統領は9日、燃料価格の引き下げを求める圧力が高まるなか、ロシア産ディーゼル燃料を輸入すると発表した。この発表に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、これはロシアのウラジーミル・プーチン大統領への贈り物で、「長引かせてはならない戦争への投資」に等しいと反発した。
トランプ氏は、ロシアのプーチン大統領が、30万トンのディーゼル燃料を「アメリカおよび世界の市場」に直ちに供給すると合意したのだと説明。11月にも50万トン、さらにその後100万トンを供給することに同意したと述べた。
トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、ウクライナによる攻撃を受けたロシアの製油所の状況次第ではあるものの、さらに300万トンのロシア産ディーゼル燃料が「短期間のうちに」納入されるだろうと投稿した。
プーチン大統領はその後、アメリカおよび世界の市場に石油と石油製品を供給する用意があると述べたが、具体的な供給量については言及しなかった。ロシアは今年7月に、ディーゼル燃料の輸出禁止措置を導入している。
プーチン氏は声明の中で、9日にトランプ氏と世界のエネルギー情勢について話し合ったと述べ、「ロシア側は、アメリカ市場および世界市場全体への石油および石油製品の供給に意欲があることを確認した」と付け加えた。
合意の一環として、米財務省はロシア産ディーゼル燃料の輸出に対する制裁を来年4月7日まで停止するとみられている。トランプ氏の発表直後、財務省はロシア産ディーゼル燃料の市場参入を認める暫定的な許可証を正式に発行した。 ただし、アメリカ国内の銀行にある資産など、その他の資産は依然として凍結されている。
ロシアのキリル・ドミトリエフ大統領特使は、ソーシャルメディア上でこの合意を歓迎し、「ディーゼルとエネルギー分野におけるロシアとアメリカの協力は、世界に利益をもたらすだろう」と述べた。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「プーチンへの贈り物は平和にはつながらない」と合意を非難。ロシアはディーゼル燃料の返礼として「さらにテロ」を行うだろうと述べた。
「我々は、ウクライナにおける人命の保護、人々の保護のために、アメリカが公正な支援を提供してくれることを期待している。そして、アメリカがロシアとそれに見合った力強い対話を行うことを期待している。弱腰な対話ではなく、力強い対話だ」と、ゼレンスキー氏は述べた。
イギリス政府の報道官は、今後もウクライナを支援し、持続的な平和を実現するために、国際的なパートナーと引き続き協力していくと強調。イギリスの立場は「これ以上明確なものはない」とした。
「我々はまた、イギリスがこれまで課した中で最も厳しい制裁措置を通じてロシアへの圧力を維持し、プーチンの侵略行為のコストを高め、公正かつ恒久的な平和を確保するための努力を支援していく」
実際の影響は
アナリストたちは、トランプ氏が言うような量のディーゼル燃料をロシアが供給できるのか、また、そうすることでアメリカの消費者の価格がどの程度緩和されるのか疑問視している。
英クイルター・チェヴィオットの投資戦略家、ティム・アーミテッジ氏は、トランプ氏が言及した数字は「比較的小さい」と述べた。
また、最初の供給量は約225万バレルに相当するが、アメリカの1日あたりのディーゼル燃料消費量は約380万バレルのため、「アメリカのガソリン価格に大きな影響はないだろう」と述べた。
「確かに、その後さらに2回の発表が予定されているが、これはトランプ大統領が中間選挙を前にインフレ率を下げようとする、いささか必死な動きのように見える」
BBCはホワイトハウスに対し、ロシアがこの約束の見返りとしてアメリカから何を得るのかを問い合わせた。
9日の発表は、トランプ氏がアメリカ国内の燃料価格を引き下げようとする取り組みの一環。トランプ氏は2月にイスラエルと開始したイランとの戦争の政治的影響と、それが世界のエネルギー価格に及ぼす影響への対応に数カ月を費やしてきた。
この紛争により、アメリカではここ数カ月でガソリン、特にディーゼル燃料の価格が急騰している。その結果、燃料価格の高騰や、そこから生じたあらゆる物価上昇の影響で苦しむ国民の間で、トランプ氏の支持率は低下した。
全米自動車協会(AAA)によると、アメリカのディーゼル燃料の平均価格は現在1ガロンあたり6.28ドル(約994円)と、9月末に記録した過去最高値の6.53ドルから下落している。
原油価格の国際指標であるブレント原油は、依然として1バレル103ドルを超えている。イランとの戦争前、ブレント原油は1バレル約73ドルで取引されていた。
ロシアでは今年、ウクライナ軍による石油精製施設へのドローン攻撃の結果、国内全域で深刻な燃料不足が2度発生した。
国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアのディーゼル燃料の生産量は約30%減少したと推定されている。
トランプ氏はこうした攻撃に不満を表明し、燃料価格の高騰はウクライナの攻撃が原因だと非難した。
しかしゼレンスキー氏は9日、石油施設への攻撃は「ロシアによるウクライナのエネルギー部門に対する長年にわたるテロ行為」への報復だと述べ、攻撃を擁護した。
「ロシアがウクライナのエネルギーインフラを破壊しない限り、ウクライナはロシアの石油精製所に火をつけることはないだろう」と、ゼレンスキー氏は述べた。
驚きの方針転換
トランプ氏の「トゥルース・ソーシャル」への投稿は情報が不足していることが多く、ロシアがどうやってこの燃料を世界市場に供給するのか、またその見返りに何を得るのかといった詳細は不明のままだ。
しかし、今回の合意発表は驚くべき方針転換と言える。というのも、アメリカ議会は先に、ロシア産の石油と天然ガスを輸入する国々に対する新たな制裁措置と関税を承認する法案を可決し、トランプ氏自身がこれに署名したばかりだからだ。
ロシアとの合意は、トランプ氏が今やロシアの戦争機構に資金援助をしているとして、欧州の同盟国やアメリカ国内の親ウクライナ派政治家から批判を受ける可能性も高めている。
米与党・共和党が議会の支配権を維持できるかどうかを左右する中間選挙が11月3日に迫るなか、トランプ氏は同党の政治的苦境を和らげる方法を模索している。
今週初めには、ガソリンに対する連邦税の一時停止を「検討している」と述べたほか、「赤色着色軽油(レッドダイド・ディーゼル)」を連邦燃料税免除のまま、アメリカの高速道路で使用することを許可すると発表した。レッドダイド・ディーゼルとは、主に公道外での使用を目的に、燃料税が免除され赤色に着色されている軽油のこと。
トランプ氏はまた、燃料の供給懸念を緩和するために、主要7カ国(G7)圧力をかけ、備蓄から1億バレルの石油とディーゼル油を放出させることに成功した。さらにそれ以前には、アメリカからのディーゼル油輸出禁止を求める声も支持していた。















